『X-メン』日本公開から20年!シリーズの歴史と未来を総ざらい

 マーベルの人気ヒーローチーム・X-MENを映画化した『X-メン』(2000)が、10月7日で日本公開からちょうど20年となりました。シリーズ及びスピンオフの原点となった1作目の魅力を振り返ると共に、『X-MEN』シリーズの未来に迫ります。(文:杉山すぴ豊)

『X-メン』
アメコミ映画の火付け役となった『X-メン』 - Twentieth Century Fox Film Corporation / Getty Images

 今でこそマーベル原作映画は映画界を席巻していますが、その先駆けとなったのが2000年の『X-メン』(1作目のみ劇場公開表記はメン)だったと思います。1980年代のアメコミ映画はDCの『スーパーマン』、1990年代は『バットマン』シリーズが主流でした。これはDCの親会社がワーナーになったこともあり、DC作品は(一部例外あり)ワーナー映画として公開されたのです。

 一方、マーベルは映画化権を渡していた会社が倒産したりと権利関係がごたつき、なかなかハリウッド大手が手を出しにくかった。それが徐々に解決し、1998年に『ブレイド』(日本公開は1999年)のスマッシュヒット、2000年に『X-メン』の大ヒット、2002年に『スパイダーマン』のメガヒットとなるわけです。これで自信をつけたマーベルが、2008年に自社で『アイアンマン』を製作し大成功。マーベル・シネティック・ユニバース(MCU)へとつながります。そういう意味で、マーベル映画の歴史において『X-メン』が果たした役割というのは大きいと思うのですが、X-MENの映画化権は20世紀フォックスが持っていて、これによりX-MENも長きにわたってシリーズ化されましたが、MCU(ディズニー傘下での展開)とは交わらず、MCUではないマーベル映画としての歴史を歩むことになります。

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日本公開時は賛否両論あった?

『X-メン』
原作のようなド派手な戦闘がなかった1作目 - Twentieth Century-Fox Film Corpo / Photofest / ゲッティ イメージズ

 さて1作目『X-メン』ですが、やはり当時のアメコミ好きにとって、ついにマーベルの人気作が映画になるということで大いに盛り上がりました。日本では1990年代に「X-MEN」の翻訳が出版されたり、アニメシリーズが地上波で放送されたり、カプコンがX-MENのゲームを発表したりと、じわじわとその知名度は高まっていきました。実際、映画『X-メン』の日本公開時に「あなたがX-MENを知ったきっかけはなんですか?」とのアンケートをとったところ、「ゲームで遊んだことがある」と答えた人は少なくなかったそうです。

 『X-メン』は成功作になりましたが、それでも公開当時は賛否両論あったと記憶しています。でいうと、ミュータント(超人)VS.ミュータント(超人)の壮絶バトルだったり、巨大なロボットと戦ったり、宇宙での大活躍といった原作コミックの派手さが映画にはないというものでした。これは恐らく、当時の映画会社も予算をかけて勝負するにはリスクがあり、何よりも当時のVFXでは派手なスーパーパワー決戦を描くほどの技術が追いついていなかったからかもしれません。

『X-メン』
X-MENの看板キャラクターであるウルヴァリン - Twentieth Century-Fox Film Corpo / Photofest / ゲッティ イメージズ

 一方での部分は、このコミックが支持されてきた「人類によるミュータントの弾圧」を人種問題やヘイトクライムの比喩として描くというテーマをきちんと取り上げたことです。映画は、ミュータントたちがヒーローどころか彼らが存在することで世論が分断されている世界という、おおよそヒーロー物らしからぬ設定で始まります。本作がうまいなと思ったのは、X-MEN誕生秘話を描こうとはせず、すでにこのチームが存在しているところにウルヴァリン/ローガンが参加することで、彼にX-MENの説明をするという形で手際よくチームを紹介していることです。

 僕自身、もっとアクションを観たいとも思ったのですが、ヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンや、ハル・ベリー演じるストームのかっこよさに大満足で劇場を後にした覚えがあります。監督のブライアン・シンガーはコミックのファンではなかったですが、自身が同性愛者であり、マイノリティーのつらさとミュータントたちの受難に通じるものがあると言っていました。そういう意味で、決してヒーロー活劇映画ではなかったですが、ヒーローをテーマにした人間ドラマとして『X-メン』は評価されたのですね。

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1作目の大ヒットがきっかけで『X-MEN』シリーズ拡大

『X-MEN2』
『X-MEN2』ではアクションもパワーアップ - Twentieth Century Fox Film Corporation / Getty Images

 1作目の大ヒットを受け、2003年にX-MEN2が公開されます。本作はドラマ部分もさることながら、1作目で弱いとされたアクション部分にも力をいれ、ドラマとアクションのバランスが非常にいい作品になっています。なおこの作品には、日本の自動車企業マツダのRX-8が、X-MENカーとして登場するんですよ。

 そして、3作目のX-MEN:ファイナル ディシジョン(2006)です。諸般の事情で前2作を手掛けたシンガー監督が降板し、『ラッシュアワー』シリーズの娯楽畑ブレット・ラトナーが監督に就任しました。シンガー監督のテイストが好きだった人や本作におけるマグニートーの描き方に不満がある人が多く、あまり高評価(好評価)を得られたとは言い難いのですが、マグニートーが磁力でゴールデンゲート・ブリッジを動かしたり、ミュータント同士の大バトルなどスーパーヒーロー映画としてのケレン味にあふれています。またミュータントであることに誇りを持つストーム、普通の人間になりたいローグ、人間でもミュータントでも自分の人生を生きればいいというウルヴァリンと、ドラマ部分も良くて個人的には好きな作品です。

 ここで興味深いのは、2006年をもって一旦『X-MEN』映画は終了するのです。ヒューやハルが大スターになったことによるギャラの高騰や、スケジュール調整が難しくなったというのが主な理由と言われています。その後、2008年から『アイアンマン』を皮切りにMCU、そしてDCの『ダークナイト』の社会的ヒットと、アメコミヒーロー映画の大ブームがやって来るんです。

『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』
『ファースト・ジェネレーション』から前日譚シリーズが誕生 - Twentieth Century Fox Film Corporation / Getty Images

 そこで20世紀フォックスは、一番人気のウルヴァリン(ヒュー)を主軸としたスピンオフウルヴァリン:X-MEN ZERO(2009)を発表。さらに2011年にX-MEN誕生秘話を描いたX-MEN:ファースト・ジェネレーション(監督は『キック・アス』『キングスマン』のマシュー・ヴォーン)を公開します。もともとX-MEN ZERO(原題はX-MEN ORIGINS)という路線でマグニートーらの若かりし日々を描くシリーズを想定したようですが、これが『ファースト・ジェネレーション』に集約されたようです。

 以後フォックスは、ウルヴァリンのスピンオフでウルヴァリン:SAMURAI(2013)、LOGAN/ローガン(2017)、『ファースト・ジェネレーション』路線の続編でX-MEN:フューチャー&パスト(2014)、X-MEN:アポカリプス(2016)、X-MEN:ダーク・フェニックス(2019)を公開。MCUとは別の、X-MENを基軸にしたマーベル映画路線を築きあげていくのです。『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』以降の『X-MEN』映画を観るとわかるのですが、もとの『X-MEN』3作品と辻褄があわないところが結構でてくるんです。

『デッドプール』
「俺ちゃん」ことデッドプールは、今やローガンと並ぶ人気キャラに - Twentieth Century Fox Film Corporation / Getty Images

 しかし新旧X-MENが時空を超えて共演した『フューチャー&パスト』において、X-MENの世界には様々なタイムライン(要は過去をいじることで違う現実が生まれるというパラレルワールド的発想)が存在するというのが「あり」になります。これはX-MENないし、X-MENのキャラを使って今までの流れに縛られない作品を作るときにはとても便利(笑)。これも追い風になって成功したのがデッドプール(2016)とデッドプール2(2018)。このキャラの前身は、『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』でライアン・レイノルズが演じたウェイド・ウィルソン。しかし、『デッドプール』2作品はライアン・レイノルズが同キャラを演じるということだけ借りて、全く別のギャグと暴力描写いっぱいのヒーロー物に仕上がっています。(『デッドプール2』の劇中では、『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』は別のタイムラインの話とギャグにしてますから)。

 『デッドプール』が画期的だったのはR指定のヒーロー映画だったことです。基本、スーパーヒーロー物は子供も楽しみたいからR指定は避けるのですが、『デッドプール』はその過激な表現を活かすために、あえてR指定に挑戦し、見事大ヒットです。これにより『LOGAN/ローガン』もR指定で大成功しました(この成功があったから、DC/ワーナーも『ジョーカー』をR指定で製作する英断に踏み切れたのだと思います)。

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X-MEN、MCU入りへ…ディズニーのフォックス買収で変わる未来

『デッドプール』
『ザ・ニュー・ミュータンツ(原題) 』主要キャストのメイジー・ウィリアムズ、アニャ・テイラー=ジョイ、チャーリー・ヒートン - Emma McIntyre/ Michael Tran / Axelle / Matt Winkelmeyer / Getty Images for The Hollywood Reporter

 20世紀フォクスは、『X-MEN』映画の可能性を広げるべく新たなスピンオフに挑みます。それがチャニング・テイタム主演で企画されたガンビットの単独映画(X-MENコミックの中でも人気のイケメン兼泥棒ヒーロー)や、若きX-MENの活躍を描く『ザ・ニュー・ミュータンツ(原題) / The New Mutants』です。これらの作品は2018~19年を目処に連続公開されるはずでした。

 しかし、ここで大きな出来事が起こります。20世紀フォックスがディズニーに買収されるという事態です。それは、X-MENの映画化権がディズニー傘下のマーベルに移ることを意味するので、X-MENをMCUに登場させることが可能になります。このことから、ガンビット単独映画の製作は一旦キャンセルとなり、フォックスの『X-MEN』映画は『X-MEN:ダーク・フェニックス』をもって終了。『ザ・ニュー・ミュータンツ(原題) 』については、一度完成したものをフォックスが気に入らず公開延期となりましたが、フォックスを買収したディズニーは、逆に今の『ザ・ニュー・ミュータンツ(原題)』を気に入り、今年8月28日に全米で劇場公開されました。

サイモン・キンバーグ
シリーズ作品やスピンオフの製作・脚本を務めてきたサイモン・キンバーグ - Albert L. Ortega/Getty Images

 もし20世紀フォックスがディズニーに買収されなかったら、『X-MEN』映画はどうなったのか? 昨年『X-MEN:ダーク・フェニックス』が公開された際、フォックスの『X-MEN』映画のキーマンだったサイモン・キンバーグにインタビューしたのですが、彼はX-MENの活躍を宇宙で広げたいと考えており、『X-MEN:ダーク・フェニックス』はその先駆けにするつもりだった。またフォックスがX-MENと同様に映画化権を持っていたファンタスティック・フォーとのクロスオーバーもアイデアにあったと話していました。

 では、MCU入りするX-MENはどうなるのか? 昨年のサンディエゴ・コミコンで、MCUのキーマンであるケヴィン・ファイギは、ミュータントのこともいま考えていると明言しました。『X-MEN』映画を作るのか、あるいはウルヴァリンなどの人気キャラがMCUにまず現れるのか(元々ウルヴァリンはハルクのコミックでデビューしましたから)。実際、MCUドラマ「ザ・ファルコン・アンド・ザ・ウィンター・ソルジャー(原題) / The Falcon and The Winter Soldier」には、「X-MEN」原作コミックに登場するマドリプールという場所が出てくるそうです。

『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』
『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』に登場したピエトロとワンダ - Walt Disney Studios Motion Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

 それから『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』に登場したワンダ&ピエトロ・マキシモフは、原作コミックではX-MENのヴィラン、マグニートーの子供なのです。だからワンダを起点に、マグニートーの物語が誕生する可能性もゼロではありません。さらに、Disney+(ディズニープラス)ではアダルト視聴を前提としたコーナーが生まれるとも言われており、『デッドプール』がDisney+で視聴可能、その延長でデッドプールのMCU入りが可能になるかもしれません。

 X-MENのMCU参加を歓迎しながらも、ここで改めて20世紀フォックスの『X-MEN』映画の功績を強調したいと思います。ヒーロー物にドラマ・社会性を持ち込んだこと。スピンオフやR指定映画とヒーロー映画のビジネスの可能性を広げたこと。そして、なによりも2000年に『X-メン』が成功しなければ、いまのアメコミヒーロー映画ブームはなかったかもしれません。アメコミ映画史において『X-MEN』シリーズは偉大な足跡を残したのです。

 最後になりますが、僕が映画ライターとして初めて劇場用パンフレット寄稿したのが『X-MEN2』でした。僕のライター人生もX-MENと共にあります。

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杉山すぴ豊(すぎやま すぴ ゆたか)プロフィール

アメキャラ系ライターの肩書でアメコミ映画についての情報をさまざまなメディア、劇場パンフレット、東京コミコン等のイベントで発信。現在「スクリーン」「ヤングアニマル嵐」でアメコミ映画の連載あり。サンディエゴ・コミコンも毎年参加している。来日したエマ・ストーンに「あなた(日本の)スパイダーマンね」と言われたことが自慢。

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