飽和状態のヒーロー映画が、まだ進化すると希望の光も感じる

前情報である程度、予想する人も多いだろうが、この作品は徹底して情報シャットダウンで向き合うべき。最大の見どころを、絶対に伝えたくないもどかしさ。ある意味「ルール違反」な設定を、ここまで効果的に使うとアッパレしかない。
冷静に考えれば複雑怪奇だが、スパイダーマンだから可能になった面白さで、ピーター・パーカーの青さゆえの発端が壮大な事件へ発展するのもこのキャラらしい。見せ場のアクションの収集のつかなさも、状況を反映していて納得。要所では、俳優トム・ホランドの成長に身震いする。
「思い出として大切にすること」「忘れること」。この両者が果てしない感動を導き、終盤、タイトルの意味が切なく胸を締めつける。