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カモン カモン (2021):映画短評

カモン カモン (2021)

2022年4月22日公開 108分

カモン カモン
(C) 2021 Be Funny When You Can LLC. All Rights Reserved.

ライター6人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.2

くれい響

天才子役を引き立たせる、受けのホアキン

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

「『ジョーカー』の次に、これ来るか!」とホアキン・フェニックスの演技の幅の広さを魅せつけるA24製作による本作。とはいえ、今回はこじらせキャラながら、あくまでも受けの芝居中心。役柄同様に見事な距離感で、9歳の甥を演じるウディ・ノーマンの天才子役っぷりを引き立たせていく。いかにもマイク・ミルズ監督作な独特な空気感が包み込む家族の物語だが、同じ中年男と少年との交流を描いた『アバウト・ア・ボーイ』と比べると、笑いの要素など、モノ足りなさを感じるのも事実。とはいえ、ノーマンもニコラス・ホルトのように成長する予感大だし、「星の子供」の読み聞かせシーンなど、印象的なシーンも多い。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

子供によって育てられる大人の物語

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 実にチャーミングで愛おしい映画だ。ジャーナリストとして忙しく働く独身男性ジョニーは、ある複雑な事情から妹の息子ジェシーを預かることになる。このジェシーというのが、人一倍想像力が豊かで感受性の鋭い少年。それまで自分中心だったジョニーは、自由奔放な甥っ子に振り回されつつ「父性愛」のようなものに目覚めていく。そりゃ大人だって子供だって色々ありますよ。人生は決して楽じゃない。ジェシーもそれを十分に理解している。子供の知性を侮っちゃいけない。とはいえ、やはり子供は子供。その人格を尊重しつつ、守ってあげるのは責任ある大人の役割だ。疑似親子の微笑ましい交流を通じて、大人の振る舞いを考えさせられる。

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猿渡 由紀

マイク・ミルズらしい、温かくて優しい映画

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

家族にまつわるパーソナルな物語を優しい視点で描くのは、マイク・ミルズが得意とするところ。モノクロで撮影するという選択をした今作は、ミニマルにすることで、人と人との関係に、よりくっきりと焦点が当たっている。幼い甥と中年の独身男が次第に絆を築いていくという設定自体は新しくないが、すべてのシーンに正直さがあるせいで、ありがちな感じ、あるいはメロドラマ的にはならなかった。成功の最も大きな鍵は、ホアキン・フェニックスとウッディ・ノーマン。「ジョーカー」での強烈な演技に続き、今度はまるで反対の側面を見せるフェニックスの幅の広さには、あらためて感心させられる。

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斉藤 博昭

思い出はこのモノクロ映像として記憶されると、何だかしみじみ…

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

ひとつめのポイントは、主人公が各地で集める「子供達の声」。
そこにはピュアな本音から社会的メッセージまで様々な言葉が入り乱れ、監督が現代社会に訴えたいテーマも色濃く抽出。ともすれば頭でっかちで、あざとさに陥りかねないチャレンジングな様式だが……ふたつめの、より大きなポイント、主人公と甥、2人に育まれる絆が丁寧につむがれ、美しきロードムービーにすんなり入り込む。
離れがたくなった2人は「いつかこの時間も忘れるの?」と寂しがりつつ「大丈夫、覚えてるから」と慈しみあう。記憶は、きっとモノクロ写真のように。だからこの映画、モノクロだったんだ。
子供達の声が9歳の甥と一体となる瞬間、映画は芸術となる。

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平沢 薫

幼い甥っ子に振り回されて

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 映画を見ながら、ホアキン・フェニックス演じる主人公と一緒に、急に預けられた幼い甥っ子に振り回される。息子ではなく甥という距離感がポイント。子供の行動は、自然発生だが、少々鬱陶しくもあり、面倒臭いが、心和ませてくれることもある。生活の中で生じる感情の複雑さや、それに対処する方法は、子供でも大人でも大きな違いがないことを痛感させる。それを感じながら、人間というもの、自分というものについて、なにか発見をしたような気がしたりもする。

 モノクロなのに柔らかく暖かな映像は『家族を想うとき』『わたしは、ダニエル・ブレイク』などでケン・ローチ監督と組んでいるロビー・ライアンが手掛けている。

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森 直人

不器用なふたりのコミュニケーション・レッスン

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

ヴェンダース監督『都会のアリス』(ジャーナリスト男性と9歳の少女の旅)のアートフォームに自身の子育て体験を絡める形で、マイク・ミルズ監督の新しい傑作が立ち上がった。描かれるのは「父と息子」の練習のような叔父と甥っ子の姿。私小説的なべたつきから絶妙な距離を置き、デトロイトやニューオリンズを含む子供達の声を聴いたドキュメンタリーパート(「タッチ」というより実質ガチ)も秀逸。

C’MON C’MON――「先へ先へ」と「こっちにおいで」の両義が分断を乗り越える未来と融和の主題を映し出す。『ジョーカー』が「ハードホアキン」の究極なら、スパイク・ジョーンズ監督『her』と並ぶ「ソフトホアキン」の珠玉作!

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