差別される者の実感に、黒い笑いを交えた恐怖映画の新機軸。

相手はゴーストやクリーチャーじゃない。恐怖映画の新機軸だ。白人家庭に招かれた黒人青年の視点を通し、表面的にはリベラルを装う人々の心理が、薄皮を剥ぐようにして明らかになっていく。偏った理念に基づく、許されざる異常な行動。しかし絵空事とは思えない。黒人コメディアンのジョーダン・ピール監督が、経験に基づきダークな笑いを交え、切れ味鋭く社会批判を繰り出す。被差別者が味わう陰湿な空気をVRよろしく体感させ、エンターテインメントにまで昇華させている。分断が深まるアメリカだが、こうした形で表現が行われ、受け入れられることは見事だ。日本にも潜む同質のテーマ。このタッチのフォロワーは出現するだろうか。