見事な脚色に拍手

原作からブラッシュアップされた脚本が逸品だ。特に恋愛部分の排除。むしろここは「女性観客向けに恋愛要素を入れるべき」とする映画界の古い価値観に囚われた人たちがねじ込んでくる部分だが、この英断がクセ者たちが蠢く出版界の狂騒を例え風刺を込めてシニカルに描いていたとしても、プロの現場の厳しさと文化芸術に携わる人全てへの愛が根底にあることが伝わってきて観賞後の爽快さに繋がっている。そして、この狂騒の象徴である國村隼演じる大御所作家の存在の素晴らしさたるや。韓国映画『哭声/コクソン』の怪演といい、毎度予想だにしないキャラクターで登場して作品を盛り上げる俳優はいるだろうか。しみじみと良い俳優だ。