ミスター・メルセデス、The Sinnerほか大人向けサスペンス系5選

厳選!ハマる海外ドラマ

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ボディガード -守るべきもの-
「ボディガード -守るべきもの-」シーズン1より

 さまざまなイベントが多いこの季節。関係ある人もそうでもない人も、寒くて長い冬の夜にはじっくりと見応えのあるサスペンス系がオススメ。1日中引きこもってビンジウォッチングするもよし、家族が寝静まった後に1話ずつ楽しむのもよし。コメディーからホラーまで、新作かつ1シーズン10話前以下で、一つの決着を見る秀作シリーズ5本を紹介する。

老いのネタも味わい深い大人のための娯楽作「ミスター・メルセデス」

 ベストセラー作家、スティーヴン・キングが初めて挑んだ本格ミステリー(3部作の第1作)のドラマ化。2年前に多くの死傷者を出した痛ましい殺人を犯したが、警察の捜査の目を逃れて一市民として日常生活を送る青年ブレイディ。事件の担当だった元刑事ホッジスを挑発する、姿の見えない犯人“メルセデス・キラー”ことブレイディと、ホッジスの攻防戦を描いたミステリーだ。シーズン1は原作3部作の第1作に比較的忠実だが、随所に「ビッグ・リトル・ライズ ~セレブママたちの憂うつ~」(2017)や「弁護士ビリー・マクブライド」(2016・2018)など、ここにきて第2の黄金期を迎えたとも言うべきデイビッド・E・ケリーによる洗練された作風の粋さが光る。

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ミスター・メルセデス
刑事を哀愁たっぷりに演じるのは「ハリポタ」でおなじみのブレンダン・グリーソン (c) 2018 Sonar Entertainment Distribution, LLC. All Rights Reserved.

 何よりもまず『ハリー・ポッター』シリーズのマッドアイ・ムーディ役で知られる英国俳優ブレンダン・グリーソンが演じる、哀愁漂うホッジス像が秀逸。人生に疲れ、酒に溺れる中年男性が、現代のテクノロジーを駆使する卑劣で邪悪なブレイディに対して刑事魂を再燃させていく。その過程で意外なロマンスもあるのだが、全編を通じた老いのネタが効いている。久々に女性とベッドをともにする機会がめぐってきたときの、身体的な衰えに焦るホッジスのおかしみと哀れみといったらない。

 原作と大きく異なる点として、何かと世話焼きの隣人の女性アイダ(ホーランド・テイラーも素晴らしい!)のキャラクターは特筆すべきものがある。ホッジスとアイダの関係性やダイアローグ(会話)は味わい深く、「若者にはわからないだろうなあ」なんて思いにしみじみしたり、苦笑いしたり。

 ミステリーとしては、原作を未読でキング作品と思って観るとシーズン1には超常現象などは登場せず、多少の肩透かし感はあるかもしれない(シーズン2はいわゆるキング味のある展開となる)。しかし、この驚くほどの王道感がいいのだ。自分は賢いと思っている大勘違い野郎のブレイディは怪物でも何でもなく、自分勝手でちっぽけで、滑稽ですらある忌むべき犯罪者に過ぎない。家庭環境に問題があることは事実だが、「心の闇とかそんなことは俺には関係ない。悪いやつは悪いやつだ」というホッジスのシンプルな信念は、妙に胸を熱くするものがある。ベタな選曲にメロドラマや自虐的な老いの要素に人情味もプラスされた、これぞ大人のための娯楽作である。

シーズン1(全10話):Amazon Prime Videoで配信中、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントよりDVD発売中(価格:7,600円+税)
シーズン2(全10話):BS10スターチャンネルにて【字幕版】毎週金曜よる11:00ほか【二か国語版】毎週水曜よる10:00ほか放送中

サスペンス ★★★★☆
ミステリー ★★★★☆
人間ドラマ ★★★★★

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最終話の怒濤の盛り上がりも満足度高し「ボディガード -守るべきもの-」

 「ゲーム・オブ・スローンズ」のロブ・スターク役で知られるリチャード・マッデンが要人警護にふんし、ガチムチな筋肉体型をこれでもかと有効活用して魅せる英BBCの人気シリーズ。マッデンが演じるのは、アフガニスタン帰還兵でPTSDに悩むロンドン警視庁の巡査部長デイビッド・バッド。偶然乗り合わせた列車でイスラム教徒による自爆テロを防いだ功績により、海外派兵の推進者で野心家の女性内務大臣モンタギューの警護に就くことに。暗殺の危機に遭遇しながら、バッドは事件の驚くべき全容を解明していく。

ボディガード -守るべきもの-
『シンデレラ』の王子様も人気のリチャード・マッデン(中央)

 冒頭から実にさまざまなことが起こり、イギリスの政治や社会問題を反映させつつ派手なアクションも交えて二転三転する物語は、最後の最後までひねりが効いている。トリッキーな仕掛けやミスリードも巧妙な作品で、最終話の尋常ではない盛り上げ方にも満足度は高い。特に怒濤の終盤はエモーショナルで、戦地で精神の安定を失わざるを得なかったバッドという一人の男の魂の叫びが聞こえてくるよう。このシーンに込められたメッセージ性は深く重いもので、国は違えど多くの人々に響くものがあるに違いない(この後に紹介する米HBOの秀作コメディ「バリー」の主人公もまた、アフガン帰還兵である)。

 しかし、やはり本作の魅力をマッデン抜きに語ることはできないだろう。狂気と生来の善なる心、正義感がせめぎ合いながら職務を遂行する寡黙なボディガードぶりはハマり役。ほれぼれするほどかっこいい。

シーズン1(全6話):Netflixで独占配信中

サスペンス ★★★★☆
ミステリー ★★★★☆
アクション ★★★☆☆

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主人公が犯人!虚実入り混じる展開に引き込まれる「The Sinner -隠された理由-」

 1シーズンで一つの事件が完結するアンソロジーシリーズ。シーズン1「コーラ編」(2017)はドイツの人気作家ペトラ・ハムスファーの「記憶を埋める女」を基に、ジェシカ・ビールが製作総指揮&主演を務めてドラマ化した。多くの目撃者がいる中、湖畔に夫と幼い息子と3人で遊びに来ていたコーラは手にしていた果物ナイフで近くにいた青年を刺し殺す。犯行は明らかだが動機は不明で、記憶に欠落した期間があるコーラの深層心理を、アンブローズ刑事が紐解いていく展開は、刺激的で連続性にも優れている。重厚でより陰鬱な原作に比べて、比較的軽めに観られる作りがいい。

The Sinner
シーズン1「コーラ編」

 高い人気と評価を得てのシーズン2「ジュリアン編」(2018)は、少年ジュリアン(エリシャ・ヘニグが怖いほどの好演を見せている)による両親殺害の自供から幕を開ける。シーズン1と同じく冒頭で犯行が描かれるが動機が不明で、故郷に戻ったアンブローズ刑事が自身のトラウマと向き合いながらジュリアンが何を隠しているのかを探っていく。

The Sinner
シーズン2「ジュリアン編」

 犯人となる人物が信用できない語り手であり、虚実が入り混じる展開はシーズン1と共通している。今回は地元で問題視されている共同体モスウッド・グローヴをめぐる、謎閉鎖的な村社会の“嫌な感じ”を適度に盛り上げて安定の仕上がり。特に、事件の鍵を握る共同体に暮らす女性ヴェラを演じるキャリー・クーンの演技には引き込まれる。「LEFTOVERS」シリーズ(2014・2015・2017)、「FARGO/ファーゴ3」(2017)などの秀作ドラマや新作映画『妻たちの落とし前』の公開が控える実力派のクーン。視聴者を翻弄し、ジュリアンとの関係性やヴェラの本心はどこにあるのかといった謎を、最後まで引っ張る巧みな役作りはさすが。

 もともと心理スリラーの要素が強いシリーズなのでミステリーとしては力技もありつつ、シーズン1と同じく重い題材を突き詰め過ぎない見やすさが信条だ。閉鎖的な村社会、カルト的な集団、トラウマ話、そしてビル・プルマンふんする人生に疲れ傷ついた刑事の哀愁と、この手のドラマが好きな人にはたまらない要素がてんこ盛り。シーズン2のみの視聴でも十分楽しめるが、アンブローズが「コーラ編」で取った言動ともリンクするものがあるので、できればシーズン1と併せて楽しみたい。

シーズン1&2(ともに全8話):Netflixで独占配信中

サスペンス ★★★★★
ミステリー ★★★☆☆
人間ドラマ ★★★★☆

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役者志望の殺し屋!予想もしなかった着地点にあ然「バリー」

 アフガニスタン帰還兵の元海兵隊員で殺し屋を請け負う孤独なバリー・バークマン。中西部クリーブランドに住む彼が、殺しの依頼でロサンゼルスへ。ターゲットを観察するうちに成り行きで演劇の面白さに目覚め、俳優の卵たちとともに演劇講師ジーン・クジノー(ヘンリー・ウィンクラーのとぼけた味わいも絶品)のクラスで演技を学ぶ。ヒットマンの自分と、仲間たちと交流しながら演じることにのめり込んでいくバリー。クジノーや思いを寄せるサリーにも嘘をつきつつ、舞台に上がれば帰還兵として心に傷を負ったダークな一面が、演じる役に真実味を与える。この逆転現象における矛盾が頂点に達したとき、バリーはどんな道、どんな人生を選択するのか?

バリー
ビル・ヘイダーが役者を目指す殺し屋に(C)HBO / Photofest/ ゲッティ イメージズ

 設定からしてシュールだが、終わってみると予想もしなかった着地点に「何だかすごいものを観てしまった……」と、しばし呆然とさせられる。気がついたら深い闇の中で迷子になっているかのような、何とも言えない感情が渦巻く中で置き去りにされる感覚。これがジャンルとしてはコメディーなのだから、アメリカにおける「笑い」のセンスの幅の広さには敬服するしかない。

 クリエイターで主演のビル・ヘイダーは「サタデー・ナイト・ライブ」でおなじみ。殺人をいとわず平凡な幸せを夢みる非常に複雑なバリーを演じて、無表情でミニマルな演技の中にもおかしみと悲しみ、怒りと不安、そして幸せを渇望する切なさを伝えるヘイダーは秀逸だ。

 そんな米コメディーの最前線に、この人の名前は欠かせない。秀作「アトランタ」の立役者ヒロ・ムライだ。本作では第4話、第5話の監督を手がけているのだが、この2話が最高にキレッキレで大興奮! 第4話は乾いたバイオレンス描写が容赦なく、ど迫力。第5話は「マクベス」をめぐる思索的、哲学的なやりとりにもなるほどなあと感嘆しつつ、またも惨劇が。全編を通して日常にバイオレンスが入り込んでくる感じが怖くもありシュールでもあるのだが、中でもインパクトのある2話となっている。

 「アトランタ」シリーズ(2016~)のドナルド・グローヴァーはラッパー、チャイルディッシュ・ガンビーノとしても人気だが、ムライはグローヴァーとのコラボレーションで革新的な作品を生み出し続けている。2018年5月5日にリリースされて話題を呼んだガンビーノの「This Is America」のミュージックビデオを手がけたのも、このムライ。2人のコラボから生まれたこの名作MVと「アトランタ2」に、「バリー」での監督経験(特にバイオレンス描写)が間接的に影響を与えていたことをインタビューでも語っていたので、興味のある人はぜひMVもチェックしてみて欲しい。今をときめく才能たちを目撃するのにも「バリー」はもってこいの作品だ。

シーズン1(全8話):Amazon Prime Videoで配信中  

サスペンス ★★★★★
アクション ★★★★☆
ブラックコメディ ★★★★★

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恐怖と同時に押し寄せる謎の嵐が病みつきに「ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス」

 ジャンルとしてはホラーであるが、お化け屋敷的な単純な怖さではない。一人で夜に観たら画面の暗闇の中に何かが見えるかも。そんな怖さに気づくと背筋がぞわぞわとしてくるのだが、本作は恐怖を通して人間を描いた作品でもある。

ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス
絶対、足を踏み入れたくない“ヤバイ”雰囲気……

 メインの登場人物は女の子3人、男の子2人の5人の子供たち(そのうち2人の男女は双子)とその両親の7人家族。ある屋敷で一時期を過ごした子供たちが、屋敷での恐怖体験を経て、大人になっても各々がトラウマを抱えている。しかし、その度合いには個人差がある。母親は死亡しており、父親と子供たちは屋敷を出て以降は離れて暮らしている。屋敷で何があったのか、母親がどのようにして亡くなったのか? ドラマは現在と過去の彼らの姿を並行して描きながらミステリー仕立てで真実を明かしていく。

ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス
一家のあるじ(中年期)に『E.T.』の元名子役ヘンリー・トーマス。写真には写っていないが、不審死を遂げる妻役に『ナイト ミュージアム』などのカーラ・グギーノ

 いろいろと深読みができる作品だ。最後まで見終わった後、考えを巡らせながら余韻に浸りたくなる作品でもある。例えば、画面に映っている映像世界は彼らの内面を映す鏡であると考えると、兄弟たちの記憶の中にある過去や現在の怪現象にも別の意味が見えてくるかもしれない。もちろん、冒頭に書いたように怖いは怖い。屋敷によくない霊がいることは確かだし、人間が死に抱く恐れは説明せずとも映像がリアルに伝えてくれる。一方で、暗闇を恐れながらもふと吸い込まれそうになるように、これほどまでに強く死に魅せられてしまう感覚は、そうは味わうことができないとも思う。やがて恐怖と悲劇を体験した家族が行きつく先にはあるもの。それがわかったとき、どうしようもなく心揺さぶられてしまうのだ。

 番組のクリエイターで全話を監督したのは、スティーヴン・キングの原作を映画化したNetflixオリジナル映画『ジェラルドのゲーム』で気を吐くマイク・フラナガン。『サイレンス』(2016・Netflix)などサスペンスフルな作品における人間の緻密な心理描写に長けた演出手腕は、本作でも遺憾なく発揮されている。

シーズン1(全10話):Netflixで独占配信中

サスペンス ★★★★☆
ホラー ★★★★☆
人間ドラマ ★★★★☆

今祥枝(いま・さちえ)ライター/編集者。1月より「yom yom」(新潮社)で読物連載「海外エンタメ考 意識高いとかじゃなくて」がスタートします。「小説すばる」(集英社)でコラム「海外ドラマナビ ピークTV最前線」、「日経エンタテインメント!」(日経BP社)で「海外ドラマはやめられない!」を連載中。ほかに「BAILA」「エクラ」などで映画や海外ドラマのコラム・記事を執筆。本サイトでは書籍から抜粋・再構成した連載「幻に終わった傑作映画たち」の構成を担当(書籍「幻に終わった傑作映画たち」は竹書房より好評発売中)。作品のセレクトは5点満点で3点以上が目安にしています。Twitter @SachieIma

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