第70回エミー賞総まくり!Amazon、Netflix…動画配信サービスの時代へ

厳選!ハマる海外ドラマ

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第70回エミー賞の俳優部門の受賞者たち(左からクレア・フォイ、マシュー・リス、レイチェル・ブロズナハン、ダレン・クリス - (C)Television Academy

 第70回プライムタイム・エミー賞授賞式が9月17日(現地時間)、米ロサンゼルスのマイクロソフト・シアターで開催された。今年は、大手ストリーミング・サービスのNetflixが最多の112部門にノミネートされ、2000年代以降の賞レースを席巻してきた有料ケーブル局HBOの108部門を上回ったことが話題を集めていた。先に発表になっていたクリエイティブアート・エミー賞(クリイティブ部門、ゲスト出演者、テレビ映画ほか)では、会社別ではHBO、Netflix、NBCがトップ3。プライムタイム・エミー賞と合わせると、HBOとNetflixがタイの23部門を獲得するという結果になった。主要部門の受賞結果の印象は、動画配信サービスのAmazon Prime Video、ケーブル局FXの4社が受賞を分け合った形といえるだろう。(今祥枝)

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強さを見せつけた「ゲーム・オブ・スローンズ」

 ドラマシリーズ部門の作品賞は、前年の覇者であるhuluの「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」と、昨年は放送期間が対象とならなかったため不在だった「ゲーム・オブ・スローンズ 第七章:氷と炎の歌」が戻ってきたことから、両者の闘いと見る向きが多かった。軍配は後者にあがり、受賞式までに1年以上、新エピソードがなかったにも関わらず、ここ一番での強さを発揮した。同作のティリオン役のピーター・ディンクレイジは、3度目の助演男優賞受賞を果たした。本作は次の第8章が最終シーズンとなる。総力戦となる第8章がエミー賞を圧倒することは必至だろう。

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ドラマシリーズ部門作品賞は「ゲーム・オブ・スローンズ」

 #metoo運動や反トランプなどメッセージ性も強い「ハンドメイズ・テイル」は、昨年の台風の目玉だったが、完全にオリジナルの物語へと突入したシーズン2もパワフルだ。エリザベス・モスが演じるジューンほか女性たちへの、あまりの仕打ちには見ていて胸がむかむかするほどだが、現在進行形の問題として描かれる物語は重く胸に響く。これほどの作品が、ゲスト女優賞サミラ・ワイリー(モイラ役)と、編集賞、美術賞のみの受賞とは! ピークTV時代の作品の質の高さに、ただただ恐れ入るのみ。

「ジ・アメリカンズ」が健闘!マシュー・リスのサプライズ受賞

 伏兵は、最終となるシーズン6が対象だったFXの「ジ・アメリカンズ」だ。常に批評家の高い評価と視聴者の支持を得ながら、これまでに獲得したのはマーゴ・マーティンデイルのゲスト賞2つだけ。事前の現地予想では、各カテゴリーで「should win」に本作をあげる媒体、批評家は多く見られたが、「will win」はほぼ皆無だった。だからこそ、ジョー・ワイズバーグジョエル・フィールズがシリーズ屈指の最終話で脚本賞を受賞したときは、会場には驚きと感動が広がった。さらに、主演男優賞でも「THIS IS US/ディス・イズ・アス」のスターリング・K・ブラウン(昨年の助演男優賞受賞者)、マイロ・ヴィンティミリアら有力候補をおさえてマシュー・リスが受賞したことは、嬉しいサプライズとなった。私生活でもパートナーであるケリー・ラッセルは主演女優賞を逃したが、受賞式の最中には、オスカー監督ギレルモ・デル・トロがTwitterで「Go, The Americans!!」と応援するツイートも見られた。現代における最高のドラマの一つとしてファンの記憶に残ることだろう。

「ジ・アメリカンズ」で悲願の受賞!ドラマシリーズ部門主演男優賞に輝いたマシュー・リス

クレア・フォイがエリザベス女王役で見事受賞!

 俳優部門は、前述のリス、ディンクレイジのほか、助演女優賞は「ウエストワールド」(HBO)のタンディ・ニュートン、主演女優賞は「ザ・クラウン」(Netflix)のクレア・フォイとイギリス勢2人が受賞した。ニュートンは昨年、受賞の可能性が高かったが涙をのんだので今回は嬉しい受賞となった。主演女優賞はモスが優勢と見られていたが、エリザベス女王を見事に体現したフォイの名演に文句のある人はいないだろう。同作はキャスティング賞ほか5部門を受賞しているが、特殊な境遇にある女性の良いか悪いかではなく一つの壮絶な生き様を描いた秀作。次のシーズン3と4では、40~60代の女王をオリヴィア・コールマン(こちらも大期待!)が演じることになるため、フォイにとってこれが最後のチャンスでもあった。

「ザ・クラウン」で初受賞!ドラマシリーズ部門主演女優賞のクレア・フォイ

コメディシリーズ部門圧勝の「マーベラス・ミセス・メイゼル」

 コメディシリーズ部門は、さらなる激戦区だったかもしれない。何しろ、昨年の覇者「アトランタ」(FX)がゲスト俳優賞のカット・ウィリアムズ、撮影賞、音響編集賞のみの受賞に終わったのだから。同作はシーズン2も素晴らしい出来で、この部門のフロントランナーと見られていたが、こちらも下馬評の高かった「マーベラス・ミセス・メイゼル」(Amazon Prime Video)がこの夜最多の5つの賞を獲得して圧勝した。1958年のニューヨークを舞台に、一人の主婦ミッジがコメディエンヌの道を突き進む本作で、主演のレイチェル・ブロズナハンが生き生きと下ネタの漫談を披露する演技は痛快! 今回不在の絶対王者「Veep/ヴィープ」(HBO)の最終シーズンが、来年戻ってくればジュリア・ルイス=ドレイファスとの一騎打ちとなることは必至だろう。

Amazon作品「マーベラス・ミセス・メイゼル」でコメディシリーズ部門主演女優賞を得たレイチェル・ブロズナハン

 俳優部門では、こちらも実にユニークな怪作「バリー」(HBO)のビル・ヘイダーが、ドナルド・グローヴァーを破っての受賞。同作のヘンリー・ウィンクラーが鉄板だった助演男優賞を受賞した際には、この夜、最も温かい拍手が送られたかもしれない。1974年から10年間続いた人気番組「ハッピーデイズ」でも知られるウィンクラーが6度目のノミネートで受賞を果たしたことは、業界の内輪の賞である要素が強いエミー賞において多くの人が望んだ結果だろう。受賞スピーチでは「43年前からこのメモ(スピーチ原稿)は持っているんだ」と歓喜したウィンクラー。「ハッピーデイズ」の共演者でオスカー監督ロン・ハワードも、喜びのツーショットをSNSに投稿しており微笑ましかった。

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天才クリエイター、ライアン・マーフィーが名スピーチ

 リミテッドシリーズ/テレビムービー部門は、「アメリカン・クライム・ストーリー/ヴェルサーチ暗殺」(FX)が安定の強さを発揮した。リミテッドシリーズ作品賞、主演男優賞ダレン・クリス、そして監督賞はライアン・マーフィーが受賞。マーフィーは、監督賞の受賞スピーチでは自分を支えてくれたすべての女性たち、「アメリカン・ホラー・ストーリー」シリーズでもおなじみの女優陣の名前もあげて感謝を述べた。また、作品賞の受賞スピーチでは、アメリカのLGBTQの4人に1人がヘイトクライムの犠牲者となっている現状、その法律の強化を訴え、同性愛嫌悪など差別と偏見をテーマとする本作での受賞を、ヘイトクライムの犠牲者に捧げた。マーフィーの作品群は、どぎつさや刺激的な映像表現が目を引くものが多いが、大衆にアピールしながら強いメッセージ性を伝える手腕は当代随一。次の活躍の場としてNetflixと契約している。

リミテッドシリーズ部門作品賞を受賞したライアン・マーフィーのスピーチは圧巻

 同カテゴリーで多くのファンが喜ばしく思ったのは、地味な印象だが詩的な美しさもある「ゴッドレス -神の消えた町-」(Netflix)が高く評価されたことだろう。意外にも正当なウエスタンでありながら、このジャンルにおける作品としては女性像が画期的かつ秀逸で、映画『LOGAN/ローガン』の脚本家スコット・フランクの才能を改めて印象付けた格好だ。作品賞は逃したものの、助演男優賞のジェフ・ダニエルズ、助演女優賞のメリット・ウェヴァーは受賞に値する素晴らしい演技を見せている。

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 冒頭でも触れたが、タイで最多受賞となったHBOは「ゲーム・オブ・スローンズ」の作品賞受賞に、ほっとしたというところだろう。受賞数はそこまでいかないものの、FXの近年の健闘は注目に値する。一方、Netflixは快挙であることは間違いないが、全体としては「マーベラス・ミセス・メイゼル」のAmazonの圧勝が印象に残る。Netflixの次の目標は、主要部門の作品賞の獲得となるだろう。いずれにせよ、長らくHBOとケーブル局の天下だった賞レースは、本格的に動画配信サービス主導の時代へとシフトしたと見ることができる。

「サタデー・ナイト・ライブ」コンビの司会に波紋

 今年の授賞式は、地上波各局の持ち回りでNBCが放送した。同局の長寿人気番組「サタデー・ナイト・ライブ」(以下SNL)のローン・マイケルズがプロデューサーに名を連ね、同番組のおなじみの顔ぶれがライターを務めた。司会はSNLのレギュラー、コリン・ジョストマイケル・チェが務めたが、彼らの多様性を巡るジョークや司会ぶりは不評だった。過去最低の視聴者数を記録したことは、いみじくも賞レースでは影が薄くなって久しい地上波による授賞式のプレゼンテーション、運営のあり方を問うものであったとの声もある。

司会者のコリン・ジョスト&マイケル・チェ

 そもそも、反トランプの急先鋒を担ってきたのがSNLだ。だが、今回は明確なトランプへの言及はなく婉曲的なものに終始(もちろん批判すればよいというわけではない)。さらに今月初めに、CBSの会長兼CEOで絶大な権力を誇ったレスリー・ムーンベスが、セクハラ告発運動「#metoo」によって数々のセクハラ行為が明るみに出て辞任(ムーンベスは告発内容は否認)したことに触れなかったし、この手の話題は不思議なほど語られなかった。これは「ダブルスタンダード」「偽善」だとして不興を買った。ここは自らの業界が抱える膿に切り込むべきだったのではないか(SNLが仕切るなら視聴者は当然期待しただろう)。全体としてみても、「マーベラス・ミセス~」のブロズナンやクリエイターのエイミー・シャーマン=パラディーノ、「アメリカン・クライム・ストーリー~」のマーフィー、プレゼンターで登場した「ハンナ・ギャズビーのナネット」(Netflix)が大いに話題のハンナ・ギャズビーら一部を除いて、強いメッセージを発信した人々は過去2回のエミー賞授賞式と比べても格段に少なかった。

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テーマの「多様性」は守られたのか

 授賞式のテーマは、冒頭からダイバーシティ=多様性をはっきりと打ち出していた。だが、序盤の6部門で白人の受賞が続いたことでトーンダウン。リミテッドシリーズ/テレビムービー部門の主演女優賞を「運命の7秒」(Netflix)のレジーナ・キングが受賞すると、「ついに!」といったSNSの書き込みなども多く見られた。しかし、先立って発表されたクリエイティブアート・エミー賞では、ゲスト出演賞の4枠をすべて黒人俳優が受賞を独占したことは歴史的快挙だった。また、NBCの人気コンテンツ、ライブミュージカル「ジーザス・クライスト=スーパースター ライブ・イン・コンサート(原題)/ Jesus Christ Superstar Live in Concert」が5部門を獲得し、プロデューサーとしてジョン・レジェンドが受賞。エミー賞、グラミー賞、アカデミー賞、トニー賞の四大アワードを獲得して“EGOTステータス”を制覇したことも話題となった。リアリティ番組「ル・ポールのドラァグレース」がコンペティション部門の作品賞を受賞し、ドラァグクイーン界のカリスマ、ル・ポールが先立って受賞していた司会賞と作品賞の初の同時受賞を果たしたことも特筆に価する。一部の批判にあるような「まっ白なエミー賞」だったわけではなく多様性もあったと思うが、サンドラ・オーがアジア系初の主演女優賞候補になったというぐらいで大騒ぎするようでは、いまだ十分ではないこともまた事実だろう。

リミテッドシリーズ/テレビムービー部門主演女優賞受賞のレジーナ・キング

 そんな中、話題をさらったのはバラエティスペシャル部門で監督賞を受賞したグレン・ワイスが、壇上から恋人にプロポーズをしたこと。エミー史上初の事態に会場も視聴者も大いにわいた。また、「アトランタ」に登場するキャラクターで、主演のグローヴァーがそれとはわからぬメイクで演じるテディ・パーキンスが客席の最前列にいたことは、思い出すに笑いがこみ上げてくる。この夜の最も秀逸なパフォーマンスの一つであったことは間違いない。

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話題沸騰となったグレン・ワイスの“公開プロポーズ”

(C)Television Academy

「第70回エミー賞授賞式&レッドカーペット」FOXチャンネルで放送
9月23日、13時30分~14時レッドカーペット、14時~17時授賞式
9月29日、27時30分~28時レッドカーペット、9月30日4時~7時授賞式

今祥枝(いま・さちえ)映画・海外ドラマライター。「小説すばる」「日経エンタテインメント!」「BAILA」などで連載。作品のセレクトは5点満点で3点以上が目安にしています。Twitter @SachieIma

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