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ソロモンの偽証 後篇・裁判 (2015):映画短評

ソロモンの偽証 後篇・裁判 (2015)

2015年4月11日公開 146分

ソロモンの偽証 後篇・裁判
(C) 2015「ソロモンの偽証」製作委員会

ライター5人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.8

平沢 薫

今や見かけることがなくなった美が出現する

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 相手をまっすぐに見つめる。姿勢正しくお辞儀をする。そんな、日常でほとんど見かけることがなくなった行為が、何度もスクリーンに登場する。これらの行為は、それを行う14歳の少年少女たちの、善であること、正しくあることを求めるまっすぐな気持ちを可視化したものだ。その行為同様、こうした心情もまた、今ではほとんど見ることがなくなったものだが、スクリーン上に出現するそれは、今それが実際にあるかどうかとは関係なく、美しい。見る者がその美に感じ入ることが出来るように、それが出現する場所として、中学生たちが殺人の容疑者で弁護人で検事で裁判官で、大人も召還する学校内裁判という、徹底的に虚構の舞台が作られている。

この短評にはネタバレを含んでいます
中山 治美

藤野涼子の低音ボイスが聴かせます

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

 容赦ないイジメやDVシーンを筆頭に出演者全員の心の闇が吹き出しまくっていた前篇の毒気を、後篇がすべて浄化するかのようだ。正攻法な作りで弱冠物足りなさも感じるが、その分、藤野涼子の存在感が際立ってくる。
 今どきの14歳にしては落ち着いた低音ボイスが、異例の校内裁判に重厚さと説得力を与え、傍聴者の一人となった観客をも魅了する力を持っている。なぜ彼女がオーディションで主演に抜テキされたのか。その理由がよく分かるだろう。
 何より殺人をゲーム感覚に扱った映画が乱立する中、1人の命の重みを計約4時間にわたって考える機会を提示したことは大きい。2部制にした英断に拍手を贈りたい。

この短評にはネタバレを含んでいます
ミルクマン斉藤

観終えて判る「With or Without You」。

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

そして始まる校内裁判だが、科学捜査が介入しないぶんクラシカルなミステリの趣もあり、法廷もの映画独特の昂揚感がクレッシェンドで味わえる優れもの。罪悪感に根付いた真摯な感情の格闘に、観る者の感情も激しく揺すぶられるだろう。裁判開始時は文化祭気分だった参加者を一瞬にして沈黙させるのが、前篇ではやや対応が常套的だった大人からの贖罪というのも泣かせる導入。そして俄然クローズアップされるのが「なぞの転校生」じみた神原くん(板垣瑞生)なのだが、対する藤野涼子のまっすぐすぎる眼差しもさらに強度を増してもはやエロティックなほど。でも断固として「上出来の中学生日記」を全うしたのが何より素晴らしいのだな。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

大出、裁判出るってよ!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

『前篇』ラストに流れる予告編で煽りに煽って、一ヶ月も待てねぇ状態だった『後篇』。『前篇』ほどの熱量は感じさせず、「まさか!」の展開や、前作で炸裂していたギミックはほとんどない。ある程度予想できる展開を、しっかり映像で見せてくれるところに落ち着いているといえる。とはいえ、池谷のぶえと塚地武雅演じる似た者夫婦は、まだまだ観客の涙を搾り取り、黒木華演じる退職に追い込まれた担任など、事件にまつわるさまざまなキャラが次々と、問題児・大出が被告人となる校内裁判に出廷。彼らが証言台に立つ展開だけでも惹きつけられ、結果的にクオリティの高い法廷劇を堪能。それにしても、劇中で松重豊が大声で放つ一言には驚いた!

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なかざわひでゆき

親子や先生と生徒が語り合う題材としてもいいかも

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 いよいよ学校内裁判が開かれる後篇。中学生たちが自らの手で事件の真相を究明していく。サスペンス色を強く打ち出した前篇とは少し趣を変え、ドラマチックで濃密な法廷劇に仕上がっている。
 人間は誰もが様々な理由で嘘をつく。この世に罪のない者などいない。裁判の過程で明かされていく真実は、大人たちが見せまいとしていた現実を少年少女に突きつける。だが、子供は大人が考えるほど弱くて脆い存在なのか?かえって大人の方が現実から目をそらしているのではないか?
 真相が分かってオシマイの作品ではない。劇中の様々な問題提起の答えは観客それぞれに委ねられる。家庭や学校で大人と子供が語り合う良いきっかけにもなるだろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
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