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天才ヴァイオリニストと消えた旋律 (2019):映画短評

天才ヴァイオリニストと消えた旋律 (2019)

2021年12月3日公開 113分

天才ヴァイオリニストと消えた旋律
(C) 2019 SPF (Songs) Productions Inc., LF (Songs) Productions Inc., and Proton Cinema Kft

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3

なかざわひでゆき

生き残ってしまった者の癒えない罪悪感

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 第二次世界大戦下のロンドンでイギリス人家庭に預けられたユダヤ系ポーランド人の少年。将来を期待される天才ヴァイオリニストだった彼だが、しかしデビュー・コンサートの直前に忽然と姿を消してしまう。それから35年後、兄弟同然に育った男性が彼の消息を辿ったところ、思いがけない真実を突き止める。戦中戦後の激動する時代を背景に、愛する者をホロコーストで失ったユダヤ民族の嘆きと哀しみ、そして生き残ってしまった者の癒えない罪悪感を浮き彫りにする。全体的に「音楽」と「ミステリー」に比重を置き過ぎたせいでテーマが霞んでしまった感は否めないものの、今までにない角度からホロコーストの悲劇を描いた作品として興味深い。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

美しいクラシック音楽にのせて多くの事柄を語る

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

人生のとても大事な日に突然消えてしまった親友を、35年後になって本格的に探そうとする男性の物語。過去のフラッシュバックを織り交ぜながら展開するミステリーの中では、ホロコーストの悲劇、家族、そして信仰ということが語られていく。それらのテーマ、とりわけ信仰の部分は興味深いものの、ストーリーの軸である、彼が姿を消した経緯や彼を探し出す過程などについては、ちょっとしっくりこないと感じるところもいくつか。ただ、その間、ずっと流れる音楽が美しく、感情を高める。「レッド・バイオリン」「ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声」のフランソワ・ジラールが手がけるにふさわしい作品。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

音が奏でられ始めると、それに聴き入ってしまう

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 まず、ある天才と彼に魅せられた男の物語である。そして、その天才がなぜ突然姿を消してしまったのかが長い時間の中で解き明かされていく、謎解きミステリでもある。それらがヴァイオリンの響きでつながっていく。その音に浸る映画でもある。
 音楽が物語の重要な要素となる映画は、映画全体の姿が見えてくる以前に、音楽自体の持つ力で観客を魅了してしまうことがあるが、本作もその1作。音楽が奏でられ始めると、それに聴き入ってしまう。本作では、その音が別の場所、別の時間に奏でられて別の物語になり、それらがまた音の中に溶け込んでいき、音が豊かになる。そういう音楽というものの魅力も堪能させてくれる。

この短評にはネタバレを含んでいます
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