TOUCH/タッチ (2024):映画短評
TOUCH/タッチ (2024)ライター2人の平均評価: 3.5
ミステリーが切ない愛のドラマに変わる
詩情とミステリー、ヒューマニズムと社会性がブレンドされた、良質のラブストーリー。
アイスランドの静謐な空気と、1960年代ロンドンの活気。広島の歴史の重さと、パンデミック下の制限された社会。過去と現在を行き来する物語は、それらの光景を織り込みながら、深く静かに運命の皮肉を浮き彫りにしていく。ワイルドなサバイバル劇を作り続けてきたコルマウクル監督がこのような作風をみせるとは嬉しい驚き。
海外の俳優と日本の俳優の演技のバランスもよく、恋人同士を演じた役者たちもさることながら、扇の要のようなポジションを担う本木雅弘の好演も光っている。
俳優Kōki,は、このような作品で輝くと確認
外国人監督が描く日本人という点で、かなり良心的。50年前のロンドンのシーンは、多少の違和感も時代と異国を考慮すれば納得でき、現代の日本はロケも敢行したことで自然。富士山&新幹線&カラオケも海外目線で微笑ましい。広島に関する描写とセリフには、作り手の誠実さが表れていた。
本木雅弘とKōki,が親子という設定は、日本人には感慨深いものも。特にKōki,は英語の発音も美しく、清冽な魅力も全開にして作品に溶け込んでいる。劇中でも言及されるが、演じるミコと主人公の関係はオノ・ヨーコとジョン・レノンとシンクロ。
強いインパクトを放つ作品ではないが、心に秘めたラブストーリーの切ない運命が心地よい後味を残す。