28年後… (2025):映画短評
28年後… (2025)
ライター4人の平均評価: 3.8
終末世界の新たな神話が始まる!
1作目から23年、『ザ・ビーチ』までさかのぼると四半世紀。D・ボイル監督と脚本家A・ガーランドのタッグが歩んだ道のりに思いを馳せた……のは、円熟という言葉がピッタリくるから。
スプラッター色はそのままだが表層のエッジに頼らず、少年の通過儀礼を丁寧に物語る。『スラムドッグ$ミリオネア』の主人公のような逞しさと、『シビル・ウォー アメリカ最後の日』のC・スピーニー的な成長が一体となったような感あり。
そういう意味ではシリーズ最新作というより、新たな神話の誕生というべきだろう。後に控える続編2作が楽しみ。
おぞましかったり、妙に愛おしかったり…多様な敵=感染者
基本は恐ろしく凶暴な感染者たちなのだが、進化によってその種類もいくつか登場し、ビジュアルがこれまたインパクト強大。頭蓋骨が高く積み上げられた塔など、こうしたサバイバルスリラーにしてはプロダクションデザインが崇高な魅力を放っていたりと、そのバランスも絶味。
A・ガーランドは『シビル・ウォー』の延長で、本シリーズにも社会派側面をプラスさせるのか…と向き合ったところ、世界の歴史を重ねる冒頭の映像や、隔絶された世界での文明の意味などでそのムードは匂わせつつ、全体はエンタメ志向を貫徹。
明らかに超危険な場所に無防備で行くツッコミどころはさておき、観賞後のモヤッとした感じは本作の立ち位置からして仕方ない?
”今のイギリス”を焼き付けた映画
最初にこの企画を聞いた時は随分安易なモノを作ったなと思ったのですが、本編を見るとブレグジットとコロナ禍によるイギリスと他国との断絶を想起させる”今のイギリス”を焼き付けた映画になっていました。キャストで言えばやはりレイフ・ファインズが抜群ですね。今回は凄いビジュアルで登場、狂気と知性を兼ね備えた不思議なキャラクターを怪演しています。シリーズ当初はここまでキャリアを積むことになるとは正直思っていなかったダニー・ボイルとアレックス・ガーランドのコンビですが色々な経験をシリーズに還元してくれています。
新たな世界の物語が始まる
人類を凶暴化するウイルス感染開始の『28日後...』『28週後...』を描いてきたダニー・ボイルとアレックス・ガーランドが、28年後をどう描くのか。なぜ今、それを描きたいのか。それが本作の見どころ。
もちろんサバイバル・サスペンスの魅力はパワーアップし、ウイルス感染者による襲撃の速度と生々しさはこれまで以上。ウイルスは進化し、暴力描写も激化する。それと同時に、これまでとは観点の違うドラマも動き出す。今や、この世界で生存のため必要なのは、感染者を倒すことだけではない。ここで感染蔓延後に生まれ、この状況しか知らない12歳の少年はどう生きるのか。彼の歩いていく先を見届けたい。