8番出口 (2025):映画短評
ライター2人の平均評価: 4
心が彷徨っていく映画
オリジナルのゲームには主人公の人格や抱える背景などが一切描かれていません。そんなゲームを長編映画化するにあたって明確な主人公と物語を付け加えなくてはいけない中で、思った以上にじっとりとしたモノを持ち込みました。これがハリウッドだとクライマックスに向けてどんどんテンションを高めていく『CUBE』や『SAW』のようなシチュエーションスリラーにするのでしょうが、邦画という枠組みで映画化するのならばこういう趣向もあっていいのかと思います。主人公が地下通路に迷い込んでいるうちに段々主人公の心の迷いの映画になっていくのも面白い作りでした。閉鎖空間である映画館で見るのに最適な一本でしょう。
見慣れた場所が、そのまま異空間になる
見慣れた地下通路が、そのまま異空間になる。この感覚が面白い。白いタイルの壁、白い合成樹脂の床、そこに天井灯の白色光が鈍く反射する空間は、角を曲がっても同じような光景が広がっていて、出口表示の矢印がなければ、どこにも行き着けない気がする。そんな無意識に抱いてしまう不安を刺激する。
8番出口に行き着くための規則が提示され、それをクリアするまで、同じ空間で、同じ試みを何度も繰り返さなければならない。映画なので、そこに主人公の物語が重ねられるのはやむを得ないが、反復だけで構成された作品も見たくなる。「8」という形、反復されるラヴェルの「ボレロ」、エッシャーのポスターなどの味付けも楽しい。




















