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アイム・スティル・ヒア (2024):映画短評

2025年8月8日公開 137分

アイム・スティル・ヒア
(C) 2024 VideoFilmes / RT Features / Globoplay / Conspiracao / MACT Productions / ARTE France Cinema

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.7

森 直人

ウォルター・サレスの筆致に見られるジャ・ジャンクーの影響

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

W・サレス監督の成熟を感じる名作。1971年、軍事政権下で起こった政治家ルーベンス・パイヴァの圧殺事件を描くが、焦点を当てるのは“静かな闘い”の行方だ。前半はパイヴァ家の日常が描かれる。ゴダールの映画『中国女』など多数のピンナップ、さらにカエターノ・ヴェローゾが亡命時に発表した『イン・ロンドン』といった小物使いも実に効果的。

後半は妻エウニセという女性主体の視座で長期の時間経過が綴られる。サレスは2014年にドキュメンタリー『ジャ・ジャンクー、フェンヤンの子』を発表しており、その残響を感じる構成だ。おそらくジャ・ジャンクーが「中国」を描くように、彼は「ブラジル」を描いたのではないかと思う。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

控えめかつリアルに語られるパワフルなストーリー

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

ウォルター・サレスは元々ドキュメンタリー出身の上、この家族と個人的な知り合い。メロドラマ風になりがちな話を、抑えめかつ静か、リアルに語った(実はトーレス演じるエウニセが泣くシーンがあったのだが、カットしたのだという)。とりわけ悲劇が起きる前のシーンは、子役たちのためにも脚本の流れ通りに撮ったおかげもあり、まるで本物の家族を見ているよう。この完璧な生活(だから彼らは友人に誘われてもイギリスに逃げなかったのだ)をしっかり描くことで、彼らが奪われたものの大きさがわかり、より胸が痛む。不条理な扱いを受けても気品と笑顔を失わず、前向きに生き続けたエウニセから学ぶことは実に多い。トーレスにも大拍手。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

ブラジルの名匠らしいヒューマンな感動。母娘の共演にしみじみ

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

26年前アカデミー賞主演女優賞他にノミネートされた『セントラル・ステーション』の、あまりに切なすぎるラスト。その主人公が変わらぬ姿で登場…と思ったら実娘。顔立ちも演技も遺伝子のように受け継がれた感慨に震える。母も登場するシーンでその感慨は映画ファンの幸福に変わる。
メインの舞台が1970年代なので当時の音楽&映画ネタを盛り込み、ブラジルの日常が遠く離れた日本ともシンクロ。そのノスタルジックな空気と、軍事政権下での一家の苛烈な運命の超絶コントラストが本作の特徴かと。
描かれる物語のわりに演出はあくまでも淡々なのも監督らしい。リオ・デ・ジャネイロの人々の海への想いを込めたシーンの余韻は静かで深い。

この短評にはネタバレを含んでいます
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