サタンがおまえを待っている (2023):映画短評
ポストトゥルースは当時も今も
1980年に刊行された一冊のベストセラー小説が発端となった国規模の集団ヒステリー。かつて北米で巻き起こったサタニック・パニック現象を再検証する傑作ドキュメンタリーだ。正義や倫理の名のもとにあらゆる疑惑が悪魔信仰と結びつけられ、無実の者が多数糾弾・逮捕された。荒唐無稽な理屈を大人達が平気で信じた。
ポピュリズムが社会を呑みこみ、仮構された「物語」が猛威を振るう。まさに現在ポストトゥルースと呼ばれる状況と同型だ。人間が事実よりも、自分の感情や信念に合う情報を信じやすくなる事態は別に最近始まったことではない。もし当時SNSがあったら……と本作を観ながら戦慄したが、それこそ今我々が生きている時代だ。
この短評にはネタバレを含んでいます




















