黒川の女たち (2025):映画短評
ライター2人の平均評価: 4.5
『秋刀魚の味』の、あの名台詞と似た言葉が出てくる意味
テレビドキュメンタリーの映画化が最近増えているが、これは後日、さらに取材を重ねた作り手たちの胆力が賞賛に値する。もちろん、ツラ過ぎる記憶を蘇らせ、応えてくださった当事者の方々も! その尊厳の回復の一助になればと思う。
戦時下の満州。ソ連軍侵攻を受け、無理やり“防波堤”とさせられた女性たちの証言に打ちのめされる。そして忘れてはならないのは背景に横たわる歴然とした事実、(民を守ることなく!)逃げた軍隊(関東軍)のこと。戦地へと行った小津安二郎が、遺作となった『秋刀魚の味』(62)で笠智衆に言わせたセリフ、「負けてよかったじゃないか」と同じような言葉が発せられるのも宜なるかな。小津ファンも必見だ。
全ての日本人が教訓とするべき歴史の不都合な真実
お国のためと故郷から遠く離れた満州国へと移住した黒川村開拓団。しかし日本が戦争に負けると、開拓団に家や農地を奪われた中国人たちが復讐を開始。身の危険を感じた開拓団の幹部は、逃げてしまった関東軍の代わりとしてソ連軍に身辺警護を頼み、その代償として独身の村娘15人を「性奴隷」として差し出す。村の恥として近年まで封印されていた事件の真実に迫るドキュメンタリー。ソ連軍が酷いのは当たり前だが、しかしそれ以上に怒りを覚えるのは、開拓団を騙して利用して見捨てた日本政府と軍隊、そして我が身を守るため若い女性を生贄にした開拓団幹部の男性たち。まさに日本社会の縮図。全ての日本人が歴史の教訓として見るべき映画だ。




















