ナイトフラワー (2025):映画短評
ライター3人の平均評価: 3.7
貧困の中で、彼女が咲くときは来るのか?
まず驚かされるのは、主人公の初登場シーン。北川景子に見えないほど、やつれて生活に疲れ切った雰囲気を漂わせている。
シングルマザーのふたりにひとりが貧困という日本の現実を踏まえつつ、裕福だが明らかに子育てに失敗した母親との対比を盛り込み、緊迫のドラマを紡ぐ。夜の街での商売の緊張感も生々しく、『ミッドナイトスワン』の内田監督の才腕を再確認。
切羽詰まった状況を体現する北川はもちろん、主人公の相棒にふんした森田望智の熱演も凄い。裏町ビジネスを知る醒めた視線や、主人公と付き合うことで蘇る人間味も魅力だが、一方で格闘技試合の熱演に目を見張った。
音楽が救いに
内田英治監督の“真夜中シリーズ”の第2弾は生活の苦しさからドラッグの売人に身を落とす母親と用心棒を買って出る格闘家という不思議なシスターフッドの映画。北川景子が勝負に出たなと感じる心身を削る演技を見せてくれます。相方の森田望智の迫力のあるファイトシーンも印象的です。お話としてはかなり”どん底”の物語なのですが、そこで救いになっているのが音楽。主人公の娘がバイオリンで奏でる音楽は暗くなりがちな映画の救いになってくれていて、見ている側も心理的に重くなりすぎない効果を生んでいます。共演陣では街の裏の元締めを演じる渋谷龍太の色気のあるキャラクターはが忘れがたいです。
森田望智の格闘家が、いいスパイスに!
『ミッドナイトスワン』から派生した企画だけに、子どもが才能を発揮する習い事など、いくつか共通項もみられる内田英治監督作。ヤクの売人になる北川景子は『ミッシング』の石原さとみばりに想定内といえるが、森田望智が演じる格闘家はちょっと意外性もあり、既視感がある物語において、いいスパイスになっている。相変わらず、監督の憧れが先行した闇社会の描写もあるが、渋谷龍太の圧倒的な存在感もあり、いつもの恥ずかしさから逃れられた感アリ。一方、佐久間大介の使い方に関しては、やや勿体ない気も。含みを持たせるラストに関しては、いかにも内田監督らしいが、もう少し違う演出で観たかった。






















