パルテノペ ナポリの宝石 (2024):映画短評
ライター3人の平均評価: 3.7
勝ちも負けもなく、ただ生き延びる、人生というゲーム
自由をとるか、愛をとるか? ソレンティーノ監督の作品に通底するテーマを本作も宿しているが、彼の過去作と異なるのは女性を主人公に据えた点だ。
若き日の主人公をとにかく美しく撮る。男性の視線への意識に加え、身内の自死と、そこからくる喪失感、虚無から逃れるための格闘、性の探求など、人生の要所がタペストリーを織りなす。人生では勝者か敗者かはどうでもよく、サバイバーであることが肝心。ソレンティーノ作品らしい、そんな大らかなメッセージが伝わってくる。
監督は町と生活をとらえることが得意だが、美しいだけではない、猥雑なナポリをとらえた映像も印象的。故郷に宛てた彼のラブレターともいえるだろう。
青く明るい海、強く透明な光
青く明るい海、強い透明な光、それが出会って生まれる、きらめきの眩しさ。それを充分に味わうために、大画面で見る意味がある。撮影は、パオロ・ソレンティーノ監督と前作『The Hand of God』でも組んだダリア・ダントニオが手がけている。
題名のパルテノぺは、ヒロインの名前だが、ギリシャ神話のセイレーンの名であり、監督の故郷ナポリの呼び名でもあり、その3つが重ねて描かれていく。ヒロインの10代から20代に焦点が当てられ、ある時期にだけ放たれる強すぎる光についての物語にも見える。ゲイリー・オールドマンが、ヒロインが出会う、イタリアにも住んだ実在の米作家ジョン・チーヴァー役を演じて魅力的。
甘美な夢のような眩惑性と共に
ソレンティーノ監督が故郷ナポリに捧げた女性一代記。『グレート・ビューティー/追憶のローマ』と同じくセリーヌの引用で幕を開ける、『The Hand of God -神の手が触れた日-』に続く地元賛歌。監督のセルフパロディとの評言も世に出ているが、むしろリゾートの“広告映像っぽさ”も含めた軽みが良い。
1950年を起点に68年~82年から現在まで時間経過をのばすゴージャスな肖像画。主人公パルテノペを演じるのは本作で映画デビューを飾るセレステ・ダッラ・ポルタ。若さへの熱視線だけでなく、知的に加齢・成熟していくことの美しさを映し出す。G・オールドマン演じる『泳ぐ人』の作家ジョン・チーヴァーも見もの!





















