禍禍女:映画短評
ライター3人の平均評価: 3.7
都市伝説的な恐怖を突破してくる面白さ!
近年の和製ホラー映画には笑いを入れて恐怖を緩和させる作品が多いが、本作もそのひとつ。面白いのはその入れ方だ。
前半こそ都市伝説ホラーで、続発する変死事件の衝撃や、その裏を暴こうとするミステリーが強調される。しかし、あるシーンから物語は転調。シュールな展開も相まって、ニヤニヤが止まらなくなってくる。
初監督を務めたゆりやんのセンスと、『嗤う蟲』等の脚本・内藤瑛亮が描くブラックユーモアの、幸福な融合というべきか。転調の妙という点では『サユリ』にも似た、恐怖突破のエンタメ性を感じさせる。南沙良の怪演も見どころ。
ホラー映画で恋愛映画で、さらにその先へ行く
正攻法のホラー映画のように始まって、すぐにいやそういう映画じゃないんだなという方向にスルリと横滑り。まごうことなき恋愛映画でありつつ、そこに収まらない具沢山のごった煮ぶりが魅力。
ビジュアルは常に鮮やか。ストーリーにはヒネリあり。ダメ男ありダメ女あり、ポッドキャストやリアリティ番組など現在の世相に切り込むパロディあり。長髪で顔が見えない女、林の中の古木といったホラー映画の定番に、女子の部屋のかなり仰天な形の家具など、古典とモダンが同居。ジャンル映画の王道でありながら、さらりといろんな角度から女性がずっと置かれてきた状況に触れつつ、しっかり笑わせて怖くて楽しい。
大胆な映像とドラマを求め、映画としてきっちりまとめる誠実さ
ゆりやん監督で、タイトルにも“怪しさ”香るも、冒頭からカメラアングル、カット割り、編集のタイミング、さらに音の効果など、映画のプロが作ったかのような“堅実さ”に逆に驚く。斎藤工あたりはその役柄から、もっと歯止めの効かない演技もできたろうが、そこにブレーキをかけ、“映画の芝居”を心がけているのも印象良し。
一方で、監督の顔を思い浮かべながら、軽いノリで観ていれば、怖さよりも楽しさが上回ってくる…と、計算高さにも感心する。
やりたい表現を詰め込み過ぎて、もう少し緩急があればさらなる佳作になったはずだが、ジェンダーなどテーマの込め方、そのさりげなさも含め、すべてにおいて初監督作とは思えない力量かと。





















