爽子の衝動 (2025):映画短評
『市子』の次に
古澤メイ演じる爽子は19歳のヤングケアラーで四肢麻痺の失明した父親を抱えるが、生活保護の申請が通らない。戸田彬弘監督は『市子』の世界線の延長で、より困難な闇や澱みを注視し、確実に賛否が出る「極」まで踏み込んでいった。
社会的な不幸をフィクションの燃料にする事は際どさが付き纏う。だが役者陣の熱演は確かで、45分の尺ながら長編級の重み。春木康輔のドキュメンタルな撮影は戸田監督の端正なアンサンブル術に生々しい揺らぎをもたらし、荒涼とした詩情を付与する風景選びも秀逸。音楽の抑制も良い。『市子』と同質の現実が他にも点在する――スピンオフではないが、そういった有機的な連続性の感触こそ筆者が惹かれる点だ。
この短評にはネタバレを含んでいます




















