満江紅/マンジャンホン (2023):映画短評
ライター2人の平均評価: 4
巨匠チャン・イーモウの集大成的な傑作中華時代劇
今から800年ほど前の南宋王朝。和平交渉に訪れた宿敵・金の使者が殺され、そのうえ重要な密書まで奪われたことが発覚。この国運を揺るがしかねない一大事に運悪く巻き込まれた若き武将と下級兵士は、2時間以内に犯人を突き止め密書を奪還するという難題を仰せつかる。絶対に外部へ漏れてはならない不祥事。任務に成功しても失敗しても死は免れない絶体絶命の状況下、陰謀と裏切りが交錯する中で男たちは打開策を模索していく。隅から隅まで計算され尽くしたスタイリッシュな映像と脚本、物語が進むにつれ全く別の顔を見せていく登場人物たちの人間模様。巨匠チャン・イーモウの堂々たる演出に息を吞みまくる時代劇サスペンスの傑作だ。
互いに騙し騙されて、サプライズが連打
歴史映画かと思ったら、それはそうなのだが、それ以上にコンゲーム映画。主要登場人物がみな、観客に対しても本心を隠して行動し、互いに騙し騙されて、サプライズが連打、物語が意外な方向に二転三転していく。
その「実はこうでした」や「そう来るならこう動く」によって、状況がガラっと変化するたびに、人物たちが城壁の間の狭い通路を疾走する情景が、京劇風な音色のテンポの速い音楽と共に挿入されて、映画全体のリズムを作っていく。その挿入後に映画のトーンが変わる。この演出も面白い。
それが史実を背景に重厚な歴史映画の映像スタイルで描かれるのも妙味。チャン・イーモウ監督らしい色調の変化も見逃せない。





















