ナイトボーン -夜哭- (2026):映画短評
ライター4人の平均評価: 4
現実の女性が経験している悪夢を文字通りホラーに
世間が押し付けてくるプレッシャーに耐えきれず暗いところに落ちていくというのは、現実の世界で多くのママが経験している悪夢。それを文字通りホラーにしてしまうのはさすが女性監督。「ローズマリーの赤ちゃん」とよく比較されるが、「ナイトビッチ」「ダイ・マイ・ラブ」「ワンオペレーション」をより極端にした映画とも言える。昔からよく言われる通り、このジャンルは社会を映し出すのに適しているのだ。
デビュー作「ハッチングー孵化―」で才能を発揮したベルイホルムは、今作でも独自の感性を見せつける。北欧から彼女以外にも何人か優れた若い女性のホラー監督が出てきているのは、とてもエキサイティングなトレンド。
その森は、文明社会の子育ての常識を破壊する
『ハッチング 孵化』も強烈だったが、そのベルイホルム監督がまたも母性を題材に取ってホラーを演出。トロール風の北欧フォークロアの不気味な空気が融合しているのがミソ。
人間ではないものを生んでしまった母親の精神崩壊のドラマは、神秘の森で起きたことを想像させるに十分。一方で、何事も起きてないように装うその夫には社会性がにじみ、今の時代にふさわしい物言うホラーとしても機能する。
優しいだけの夫にふんしたR・グリントのツボを押さえた好演も目を引くが、やはり母親役のS・ハーラの怪演が圧巻。ジワジワと狂気が上積みされていくさまは、『ヘレディタリー/継承』のトニ・コレットを思わせる。
北欧発、『TITANE/チタン』以降、“顔芸”ヤバすぎ!
冒頭の「引っ越し」からもうアウト! フィンランドの田舎に移住した夫婦が踏み込むのは“森直結ホラーハウス”。トロール伝承の気配漂う森は異界そのもので、妊娠は祝福から呪いに反転。初長編『ハッチング-孵化-』で森×身体変容を描いたベルイホルム監督が、今回は母性/フォーク/ボディホラーを全部盛りで爆走。『ローズマリーの赤ちゃん』の系譜を北欧流にアップデートし92分を搔っ攫う。
とりわけ“女性生理のボディホラー”が完全覚醒。妊娠・出産・授乳がクローネンバーグ発展系の侵蝕感と寓話性で描かれる。育児と孤独の悪夢を体現するS・ハーラの怪演は凄まじく“顔芸”が牽引。ポッタリアン吃驚のR・グリントも大変な事に!
「見えないこと」と異様な音で、恐怖が侵食していく
監督の前作『ハッチング ー孵化ー』の、おぞましいビジュアルが何度も脳裏をよぎる。肝心な人物の顔が見えそうで見えないため、イマジネーションで神経が擦り減らされていく感覚。この寸止め的スリルの蓄積で、観ながら異様なテンションに陥るのは、監督の計算どおりか。
一方で、重要キャラの「顔の怖さ」は強調されたり、視覚で心がざわめき続けるなか、ある耳障りな音が容赦なく神経を逆撫でし、聴覚でも特異な体験に。
そして北欧の森の神秘性が、あらゆる邪悪なムードを浄化していくかのよう。
すっかり恰幅の良くなったルパート・グリントは、“幼なじみ”ラドクリフとは、また別の危ういベクトルの役が身体に馴染んできて味わい深し。

























