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サードシーズン2012年7月

私的映画宣言

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私的映画宣言 サード・シーズン7月

筆者の近況報告

森直人

「映画秘宝EX 映画の必修科目03 異次元SF映画100」(洋泉社)というムックに8本分のSF映画解説を寄稿しました。『THX-1138』『ソイレント・グリーン』からアンドリュー・ニコルまで。
●7月公開の私的オススメは、モト冬樹主演・今泉力哉監督のダメ恋愛喜劇『こっぴどい猫』(7月28日公開)。

中山治美

堺雅人主演「リーガル・ハイ」長澤まさみ主演「都市伝説の女」など面白かったドラマが終わっちゃって寂しい。7月からは「ボーイズ・オン・ザ・ラン」。映画版と比較しましょう。
●7月公開の私的オススメは、『崖っぷちの男』(7月7日公開)。

山縣みどり

「アントラージュ」第8シーズンを一気見し、マーク・ウォールバーグが早く映画版の製作資金を集めてくれないかなとやきもき中。そしてマークが縫いぐるみの熊と共演する『テッド(原題) / Ted』に熱狂中。映画トリビアがぎっしりだよ。
●7月公開の私的オススメは、やはり『ダークナイト ライジング』(7月28日公開)。ノーラン監督&ベイルのトリロジーがついに終焉(しゅうえん)です。

斉藤博昭

『アメイジング・スパイダーマン』C・トーマス・ハウエルに、『リンカーン弁護士』マイケル・パレ『白雪姫と鏡の女王』メア・ウィニンガム。かつて自分の人生を変えた傑作で輝いていた面々が、ちらっとだけどシブ(?)く活躍している姿はうれしい!
●私的オススメは、“7月公開中”ということで強引に『アメイジング・スパイダーマン』(6月30日公開)で!

高山亜紀

ショック! 「コドモ警察」最終回! 思えば「福くんに会いたい」と言い続け、「コドモ警察」の現場取材に二度も行かせてもらった先々月。夢はかなう。周りの人にそう話して回った私は相当、痛かったのではないでしょうか。
●7月公開の私的オススメは、『4.3.2.1』(7月28日公開)。

アメイジング・スパイダーマン


(C) 2012 Columbia Pictures Industries, Inc. MARVEL, and all Marvel characters including the Spider-Man character (tm) & (C) 2012 Marvel Characters, Inc. All Rights Reserved.

アメコミ発の人気シリーズを、キャストとスタッフを一新してリブートするアクション超大作。主人公ピーター・パーカーを、『ソーシャル・ネットワーク』アンドリュー・ガーフィールドが演じ、監督には『(500)日のサマー』マーク・ウェブを抜てき。『ゾンビランド』エマ・ストーンがヒロインとして出演するほか、マーティン・シーンキャンベル・スコットらが共演。前シリーズの世界観を踏襲しつつも、アクションのさらなるパワーアップにも期待。

[出演] アンドリュー・ガーフィールド、エマ・ストーン
[監督] マーク・ウェブ

森直人

7点優等生的な仕上がり。主人公のピーター・パーカー(アンドリュー・ガーフィールド)は爽やかなイケメン好青年として登場し、旧シリーズのボンクラ感はずいぶん薄まった(笑)。監督に『(500)日のサマー』マーク・ウェブを起用したことからも、青春映画のみずみずしさを大切にした企画意図はよくわかる。実際、ヒーロー超大作というより、基本はミニマムな「学園映画」の印象。その分、アクションは3D処理も含めややカタい。ただ諸要素のバランスはソツがなく、「嫌われ要素」が少ないので、デートムービーには機能しやすいかも。

中山治美

5点前シリーズ第1弾から10年しか経ってないのに、またクモにかまれたピーターの苦悩を見せられてアメイジング。3Dがウリなはずなのに、あまり効果を体感できないことにアメイジング。そして、本編を観た高揚を思いっきりクールダウンさせてくれる日本版エンディング曲にアメイジング! ってなワケで、違う意味でビックリさせられまくり。予想はしていたけど。起死回生策は『アベンジャーズ』との合体だな。だったら観る! 観る!

山縣みどり

8点リブート&3Dなので期待薄だったが、サム・ライミ版よりも断然好き。主人公ピーターがいじめられっ子オタクから知性派のスケボー少年に代わり、新ヒロインと恋に落ちる過程に違和感がない。DNA変異クモにかまれてからスパイダーマンに変わる過程も今どき感満載だし、何よりも子どもを助けるシーンでマスクを取ったピーターの人間性に惹(ひ)かれた。作る側が子ども心を深く理解しているからの演出で、緩急つけた見せ場の作り方の巧みさにも感激。亡父と敵となる博士との関係も説得力がある上、続編でのさらなる展開を示唆させる流れに期待は増すばかり。蛇足だが、ニューヨークの道路工事関係者がクレーンでスパイダーマンのためにクレーンで空中路を作るシーンにうっとりんこ。

斉藤博昭

9点マンハッタンの摩天楼をスパイダーマンがスイングする。その滑らかさと同じように、ストーリーが澱(よど)みなく流れていった。アンドリュー・ガーフィールドの葛藤する演技が、前シリーズのトビー・マグワイア以上に、素直に心に訴えてくるので、思わず一緒に高層ビルからジャンプしたくなるってわけだ。その共感度が最後までキープされ、終盤のあるシーンでは不覚にも涙が……。3Dでアクションの体感度も上がったけど、「そこ、もうちょっと観せてくれ!」と寸止めされたシーンも数か所。ぜいたくな注文ですけど。

高山亜紀

8点どこにでもいる普通の男の子がスーパーヒーローになるスパイダーマン。アンドリュー・ガーフィールドはまさに適役だったと思う。等身大で演技も繊細、突然のスーパー能力に戸惑うさまも愛らしく、観ていて感情移入しやすい。改めて考えるとトビーのピーターはオタクっぽ過ぎて女子的には受け入れ難かった。彼はルックスもかわいく、エマ・ストーン演じるグウェンとのロマンスもまさに青春って感じ。アメコミ原作なのにデートムービーにもいいって画期的。

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苦役列車


(C) 2012「苦役列車」製作委員会

貧しい肉体労働青年の青春を描いて第144回芥川賞を受賞した西村賢太の小説を、『マイ・バック・ページ』などの山下敦弘監督が映画化。1980年代後半を背景に、19歳の日雇い労働者で、酒におぼれる主人公を中心に、その友人、主人公があこがれる女性の青春模様を描く。主演を『モテキ』森山未來が務め、ほかに『軽蔑』高良健吾、AKB48の前田敦子が共演。独特の世界観を持つ原作に挑戦するさまざまなジャンルの作品を手掛ける山下監督と、旬の俳優たちによるコラボレーションから目が離せない。

[出演] 森山未來、高良健吾
[監督] 山下敦弘

森直人

9点日本映画を観ていて最も気になるのは、スタッフやキャスト個々の才能や力量にバラつきのある場合が多いこと。しかし本作はそのもどかしさが一切ない。本物の実力者たちが余計なエゴを持たず、高いレベルでチームワークを発揮している。これぞ「仕事の理想」だ。山下敦弘監督のファンなら初期の『どんてん生活』を想起するだろうが、原作・西村賢太のやさぐれ感を森山未來が見事に体現し、不良性感度の強い「東映仕様」にアップグレードされている。舞台は1980年代だが、このハングリーな青春模様は、格差社会が叫ばれる今の時代感覚にこそフィットするのではなかろうか。

中山治美

6点これまでダメ男を描き続け、賛否あったが前作の『マイ・バック・ページ』で新境地開拓か!? と思われた山下敦弘監督。それが本作で逆戻り。そこも引っ掛かるが、名コンビ向井康介ではなく、いまおかしんじ監督が脚本を担当。いかに山下監督にとって向井の存在が大きかったかを痛感。一見ダラダラした青春ドラマに、ピリッと気の利いた向井のセリフ。それがないと前田敦子のサービスショットだけじゃ約2時間はつらい。やさぐれ森山未來はお見事だけど。

山縣みどり

7点原作が大好きなので映画化に当たっては不安もあったが、無用な危惧を吹き飛ばしてくれた。特に素晴らしいのが森山未來で、「永遠のルサンチマン」とわたしが勝手に決めつけている原作者・西村賢太の分身である主人公を薄汚く熱演。登場シーンで手バナをかむ姿は喝采ものだし、コンプレックスの裏返し的なプライドの高さと小心さが入り交じったキャラクターの神髄をつかんだ演技には圧倒される。最低最悪のダメ男をジトっと演じる実力は今の日本映画界でもピカイチのはず。山下敦弘監督の演出は『どんてん生活』や『ばかのハコ船』に戻ったような雰囲気だが、ポップ感がありすぎたクライマックスで座布団1枚取り上げさせてもらいました。どん底人生を送る主人公を甘えさせてはいけない。

斉藤博昭

9点小説の映画化として、これは見本のような好例。原作のまんま描いていたら、不愉快で自堕落な主人公にひたすら気が滅入っただろうが(それはそれで観たかったけど!)、プラスした部分が効果的で驚いた。前田敦子が意外なほど好演を見せるラブストーリーがうまく絡んでくるし、夢と希望をちらっと感じさせるカラオケスナックのシーンが心に染みる。こんなふうに映画らしいポジティブ感が伝わるのは、主人公のモデルでもある原作者が、後に芥川賞受賞で成功するという確信があって観たからかも。切羽詰まらず、笑い飛ばせるムードがいい。

高山亜紀

7点主人公は周りにいたら確実に迷惑などうしようもない人だが、憎めないキャラでもある。原作が私小説だけに最近、やたらテレビに出ている西村賢太さんを思い浮かべずにはいられず、「こんな矛盾したキャラを誰が演じられるんだ?」と思っていたら、森山君は軽々と乗り越えてみせた。「こういう人、いるいる」ではなく、「こんな人、いるんだ……」って人をリアルに演じるってすごい。青春映画だけど、青春映画の番外編みたいなところにいる人に光を当てている山下監督の愛を感じる一本。

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ヘルタースケルター


(C) 2012 映画『ヘルタースケルター』製作委員会

雑誌「FEEL YOUNG」で連載され、高い人気を誇る岡崎京子のコミックを実写化した、異色にして衝撃のドラマ。全身整形によって誰もがうらやむ美しさとスタイルを手にしてトップモデルへと上り詰めた女性が、欲望と背徳に満ちあふれた芸能界でさまざまな事件を引き起こしていく。『パッチギ!』『クローズド・ノート』沢尻エリカが、自ら出演を熱望して虚構の美をまとったヒロインを熱演。メガホンを取るのは、『さくらん』で独特のビジュアルセンスを見せつけた、写真家の蜷川実花『ハゲタカ』シリーズの大森南朋『キャタピラー』寺島しのぶ『ノルウェイの森』水原希子ら、実力派や注目株をそろえた共演陣も見どころだ。

[出演] 沢尻エリカ、大森南朋
[監督] 蜷川実花

森直人

8点すさまじい熱量の大力作。自身のセルフイメージを生かしきって完全燃焼したエリカ様も、前作『さくらん』で「女子の世界」のサバイバルを描いた蜷川実花監督も適材適所。原作発表時はコアなテーマだった「承認欲求」(誰かに認められたいという願望・依存)が、インターネットが普及して極端に肥大している今、この内容は強くアピールするはず。戸川純の「蛹化の女」(80年代)と原作(90年代)と浜崎あゆみ(00年代)と現代を串刺しにした演出意図もワザあり。AKB48 の傑作ドキュメンタリー『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』と並べてみたい。芸能界が超ハードな韓国でもウケそう!

中山治美

7点原作と比較したり、目くじら立てて批評するような野暮なことはしません。旬な女優エリカ様の裸体を堪能し、まぐわり具合で女優としての本気度をチェックする。一種のイベント・ムービーだからそれでOK。実際、エリカ様は頑張っておられますよ。ただ、今やエリカ様はヒロイン・りりこを上回るジェットコースター人生を歩んでおり、映画より圧倒的に刺激的というのが皮肉よね。できれば、中島哲也監督に撮ってほしかったー。

山縣みどり

5点「清らかな心のブス」と「邪悪な美女」のどちらかを選べと言われて迷いなく後者を選ぶわたしは美容整形肯定派だし、お金をかけた美人に文句を言う気もない。でも本作が描くのは、人工美人には相当の覚悟が必要ということ。全身整形で美人になってもメンテナンスは必須で、そのためにも体を張って働くしかなく、やがて心がボロボロに崩壊し始め……。まさに美人のタコ部屋操業。若い女性に美人って大変、と思わせるのが狙いか? 原作ファンが多いからりりこ役は相当のプレッシャーだったと思うけど、沢尻エリカは役に見事にハマった。週刊文春のスクープもPRと思わせるスキャンダラスな存在感はエリカ様ならでは。大騒ぎされたヌードがリカちゃん人形っぽくてエロさ皆無なのに驚いたが、生々しさとほど遠い肉体は蜷川監督の美学にマッチしていると感じた。

斉藤博昭

4点映画が始まって、いきなりの濃厚ラブシーン! あえぎ声、連打! 観客の期待に一気に応える意味で、商品価値の高い一作。エリカ様の脱ぎっぷりも鮮やかだけど、あまりにスッキリ出しちゃうので「CGか?」と余計な詮索をしてしまうほど。そんな肉体芸も含め、変幻自在の表情といい、沢尻の女優としての才能は再認識できた。なのに、主人公りりこの内面が突き刺さってこないのは、作り手の興味がそこにないから? 「整形=外見への過剰な関心」がテーマだから、映画も表面をなぞる作りにしたってこと?

高山亜紀

6点りりこが華麗なグラビアを次々、飾るプロローグは美しすぎて大興奮。期待は高まる一方。が、しかし! 生温い、落とし方が。後半まだまだ美しすぎ。美の頂点からどん底まで突き落とされてにじみ出てくる嫉妬やら憎悪やら後悔やらといった汚い感情が沢尻エリカからはみじんも感じられず。見えるのは疲れのみ。蜷川監督は優しすぎる。ラース・フォン・トリアーを見習って。『ドッグヴィル』のニコマン、『メランコリア』のキルステン……前半、美しければ美しいほど、堕(お)ちたときの無残さが心、打つし、エロいのに。もったいない!

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筆者プロフィール

今 祥枝斉藤 博昭前田 かおり
中山 治美相馬 学高山 亜紀
小林 真里山縣 みどり森 直人
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