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古田新太が衝撃の熱演!復讐の鬼と化す『空白』など9月の5つ星映画

今月の5つ星

空白
(C) 2021『空白』製作委員会

 MCU最新作からオスカーに輝いたデンマーク映画に街並みも美しいギリシャ映画、黒木華柄本佑共演の不倫映画、そして古田新太が衝撃の熱演を見せたヒューマンドラマまで、見逃し厳禁の作品をピックアップ。これが9月の5つ星映画5作品だ!

カンフー映画のDNAを継承!マーベルの新たな傑作

シャン・チー/テン・リングスの伝説』9月3日公開

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シャン・チー/テン・リングスの伝説
(C) Marvel Studios 2021

 マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の最新作は、武術を使って戦う新ヒーロー、シャン・チーの活躍と想像を絶する過去に迫る。犯罪組織テン・リングスを束ねる父親と対峙し、過酷な運命と向き合うシャン・チーの葛藤や決断を、ドラマ性の高い映画制作に定評があるデスティン・ダニエル・クレットン監督がじっくりと描いている。

 特筆すべきは、往年のカンフー映画のDNAを継承した完成度の高いアクション。バスの中で展開する1対複数人のファイトは、MCU史上最もハードかつユニークで、ジャッキー・チェンを彷彿させる本格カンフーアクションの畳み掛けが爽快だ。ベテランのトニー・レオンミシェル・ヨーにもド派手な見せ場が用意されているため、クライマックスまで気が抜けない。もちろん、MCU作品とのリンクは健在で、ファンを驚かせる意外な展開も。東洋文化に最大級のリスペクトを込めた、マーベルの新たな傑作が誕生した。(編集部・倉本拓弥)

ほろ苦くも、まごうことなき人生賛歌!

アナザーラウンド』9月3日公開

 『偽りなき者』のトマス・ヴィンターベア監督と主演のマッツ・ミケルセンが再びタッグを組んだデンマーク映画で、今年のアカデミー賞国際長編映画賞受賞作。血中アルコール濃度は0.05%ほどあった方が仕事の効率が上がるという理論を検証すべく、勤務中に酒を飲みはじめた高校教師4人組の姿を追う。

 中年の危機に瀕し、職場でも家庭でも無気力な日々を送っていた主人公が、アルコールの力を借りて人生を取り戻していく過程をマッツが好演。飲酒の闇の部分もしっかり描いているため、その過程はコミカルだがほろ苦くもあり、だからこそ人生の一瞬一瞬の美しさや喜びがより鮮やかに際立ってくる。“酸いも甘いもひっくるめて、人生を愛し祝福する”というメッセージをあまりにも完璧に体現したラストシーンは、映画史に残る出来栄えといっても過言ではない。そして、踊りながら酒をあおるマッツは衝撃的なほどに美しい!(編集部・市川遥)  

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一言では片づけられない、悲喜こもごもの日々

テーラー 人生の仕立て屋』9月3日公開

 ギリシャのアテネを舞台にした本作は、父親と高級スーツの仕立て屋を営むニコスが主人公。不況で店が差し押さえられ、父親が倒れ、苦境に立たされたニコスは、移動式の仕立て屋を始める。36年間スーツづくりしかしてこなかった無口で内気なニコスが、ウエディングドレスを依頼され、思いがけず新たなことに挑戦する姿が丁寧に描かれる。

 ギリシャの美しい街並みと海、華やかなドレスの数々に心躍るが、ニコスが直面する店の危機が現実に引き戻す。また、隣に住み、ドレスづくりを手伝うオルガと心通わせていく様子に心温まりつつも、二人の絶妙な距離感はもどかしく切ない。ニコスのドレスづくりを通じて、人生の複雑さを噛み締めることができる1本となっている。本作が長編初監督作で脚本も担当したソニア・リザ・ケンターマンは、少ないセリフと独特なカメラワークで観る人の想像を駆り立てており、独自の世界観を持つ監督の今後にも期待が高まる。(編集部・梅山富美子)

これは現実か?フィクションか?翻弄される心地よさ

先生、私の隣に座っていただけませんか?』9月10日公開

 主人公は結婚5年目を迎えた漫画家夫婦の俊夫と佐和子。妻は連載を抱える人気作家だが、かつて売れっ子だった夫は今は妻のアシスタント状態で、しかも彼女の担当編集者と不倫をしている始末。そんななか、佐和子は不倫を題材に自分たちを題材にしたような新作を描き始め、その内容をのぞき見た俊夫は疑心暗鬼になっていく。

 漫画には佐和子らしき女性と自動車教習所の先生が恋に落ちる展開が描かれており、これが現実なのかフィクションなのかと夫の視点に自ずとシンクロするうちに、すっかり罠にはまっている。ハラハラさせられ、次の展開がどうなるか先読みの楽しみは最後まで持続していく。その意味で妻が夫を翻弄する『ゴーン・ガール』のようなスリルも感じられるが、むしろ黒木華と柄本佑が織りなすほほ笑ましいスクリューボール・コメディーといった印象を残す。編集者を演じる奈緒も嫌われ役でありながら、憎み切れない温度感は絶妙なさじ加減だ。(編集部・大内啓輔)

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古田新太が衝撃の熱演!復讐の鬼と化す父親に戦慄と涙

空白』9月23日公開

 古田新太が、復讐の鬼と化す父親を熱演する本作。『ヒメアノ~ル』『BLUE/ブルー』などの吉田恵輔監督が、実話をモチーフに描くオリジナルストーリーだ。主人公の漁師・添田は、娘の花音(伊東蒼)に万引きの疑いをかけ追いかけたことで事故死を招いたスーパーの店員・青柳(松坂桃李)を執拗に追い詰める。さらに元妻(田畑智子)、弟子(藤原季節)ら彼を気遣う人々を拒絶し、孤立していく。やがて浮かび上がるのは、娘を誰よりも愛していたはずなのに、まったく理解していなかったことに気付かされる悲劇。都合のいいように事件の形を変えて報道するメディアが随所に映し出されるが、それは不都合な真実に目を背ける添田にも重なる。

 添田や青柳のスーパーで働く女性(寺島しのぶ)のように自己主張の強い者、青柳や死んだ花音のように自我が弱い者。思わず自身を重ねたくなるような哀愁漂うキャラクターが織りなす愛憎劇は痛みを伴うが、後味はすがすがしい。(編集部・石井百合子)

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