レイブンズ (2024):映画短評
ライター2人の平均評価: 3.5
英国人が描くあの時代の日本が興味深い
「天才か、狂人か」と呼ばれた写真家・深瀬昌久の波乱に満ちた人生を、旧世代の頑固な父親との確執に悩みつつ芸術を志した’50年代、写真家として海外からも注目された’70年代、そして道を見失い迷走した’90年代に分け、其々の時間軸を自在に行き来しながら描く。興味深いのは監督・脚本を英国人が手掛けていること。一部台詞に英語を直訳したような不自然さはあるものの、しかし当時の日本の世相や空気を非常に上手く再現できているし、価値観の激変する戦後民主主義の時代を生きた日本人の葛藤もきちんと描かれている。ダーク・ファンタジー的な要素を加味することで、狂気と理性の狭間で揺れ動く深瀬の内面を表現したのも良かった。
浅野忠信と英国人監督の化学反応が、狂気とアートの同居へ…
間違いなく浅野忠信に“溺れる”一作。破滅的運命にも身を投じる写真家・深瀬の独自な発想とセンスを体現しながら、酒に酔ったシーンでの自堕落な暴走ぶりに、演技者としての狂気がパーフェクトに発揮され、戦慄する。浅野のキャリアを知る人には、25年前、同じく実在写真家の一ノ瀬泰造役の記憶も重ねて感慨深いはず。
あえて映画的にリアリティを無視したビジュアルも、ドラマに則した演出だと納得。つねに漂う居心地の悪いムードは深瀬を表現しているかのよう。
タイトルにも大きく関わる異形の主(ぬし)は、そのアナログなテイストと主人公との関わりが「ウルトラセブン」あたりの懐かしの星人キャラを思い出させ、変に胸が熱くなった。




















