ヒプノシス レコードジャケットの美学 (2022):映画短評
ライター2人の平均評価: 3.5
最後の“ポー”の後ろ姿……ある種“挽歌”なドキュメント
いささか演出過剰に冒頭、「ヒプノシス」のオーブリー・“ポー”・パウエルが無数のアートワークを束ねて背負い、墓地を通って登場する。大仰だと思うが屋敷に入り、それらを取り出して、ピンク・フロイドを筆頭に並み居るアーティストと歴史的な傑作アルバムジャケットの秘話が始まるや、そんなことはすぐに忘れる。
斬新なアイデアと、具現化してきた驚きの制作スタイル。だが映画が終わる頃には悟る。そうした冒険、コントロールフリークぶりはもはや許されない。相棒のストーム・トーガソンはこの世にいない。ある種“挽歌”なドキュメント。アートワークを結んだ紐が“十字架”を連想させ、最後の“ポー”の後ろ姿はちょっと泣ける。
音楽シーンの移り変わりも見えてくる
ピンク・フロイドの『原子心母』のジャケットで知られるデザイン集団"ヒプノシス"の歴史を、創設当時24歳と22歳だった創設者コンビ、故ストーム・トーガソンとオーブリー・パウエルを中心に描く。現在のパウエルが登場、各時代を振り返る発言も多数。
そういう映画が、2人の人間の物語を描きつつ、68年から現在に至る音楽シーンの変化を描く歴史物にもなっているのは、監督がミュージシャンを撮る写真家出身で、ジョイ・ディヴィジョンを描く映画『コントロール』の監督でもあるアントン・コービンだからだろう。ジャケットが変わり、音楽のタイプが変わり、ポップミュージックの持つ意味が変わっていくさまが浮かび上がってくる。





















