近畿地方のある場所について (2025):映画短評
ライター4人の平均評価: 3.8
得体が知れない、だから、怖い!
昨年の『サユリ』はそんなに怖くはないが笑いに振り切れたホラーで、白石監督の新境地といえそうな面白さだった。本作では一転、ドキュメンタリー調を含めてらしさが狂い咲く。
雑誌編集者の失踪を皮切りに、彼が追っていた事件、部下たちによる捜索や、彼らのプライベートが明かされる。すべては“点”で、それらをつなぐ“線”を匂わせる程度にとどめる妙。結果、得体の知れなさが強調され、考えれば考えるほど怖い映画となった。
近年の人気Jホラーは、怖さに人間ドラマの付加価値を付けることで恐怖を緩和する方向にある。そういう意味では久しぶりに怖さを感じた。描きすぎないことがホラーの本質であることを再認識。
「発見された映像」に「民俗学」を掛け合わせ
「発見された映像」ネタに「民俗学」を掛け合わせるという妙手。発生源が不明な"伝承"が、媒体を変えながら、どんどん変化していく。口伝の民話、子供の遊びから、TVのニュース映像、ネット動画、スマホ動画と媒体を変え、拡散速度を増しながら、呼び名を変えていく。しかし根底にあるのは伝統的概念なので、一見しただけで、穢れ、忌みだと直感させる。そのうえ細部はあえて説明せず、観客の考察意欲を刺激する。
監督は「オカルトの森へようこそ」「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」の"発見された映像"使いの名手、白石晃士。ビデオテープ映像の粒子の粗い触感、プロではなく素人が撮った設定の記録映像のリアルが際立つ。
それぞれの持ち味発揮の挑戦的なコラボ
白石晃士監督がワーナー・ブラザースと組む挑戦的なコラボにして、『エコエコアザラク』『催眠』などのジャンル映画において、爪痕を残してきた菅野美穂が主演。一方、過去のビデオやライブ配信映像などに出てくるのは無名俳優ということで、白石監督十八番のモキュメンタリー色が出まくり。そういう意味では『リング』の構造にも似ているが、赤楚衛二演じる編集者と菅野演じるライターがすぐにバラバラになることで、緊迫感が途切れてしまうのが難。後半のロードムービー展開からバディ要素が強まり、ずっと抑えられていた感のある白石監督らしい狂気も爆発。そういう意味でも、エンジンがかかるのがやや遅め。
久しぶりの白石モキュメンタリー
白石晃士監督の久しぶりのモキュメンタリータッチ作品。『ノロイ』や『オカルト』と言った初期監督作品を想起させる空気感が嬉しい一本。ただ、それだけで終わらず後半にはパワフルな展開が見られるなど最近の作品の空気感も感じることができます。そういう意味では白石監督の一つの集大成と言えるかもしれません。モキュメンタリーには”俳優の無名性”が求められる中で主演の二人ははっきりとした一線級の主演型俳優ということで、フィクションであることは明らかなのですが、挿入される多種多用な映像資料の出来があまりにもよくて、ついつい二人の有名性を忘れてしまいます。























