父と僕の終わらない歌 (2025):映画短評
ライター2人の平均評価: 3
横須賀の町に溶け込んだ父子模様
父と子の絆の物語として堅実に着地。とりわけ、生活感のある描写が生きており、少々突飛な展開を現実に引き戻すうえで効果を発揮する。
父=寺尾聰と息子=松坂桃李のキャラクターはそれぞれ昭和と平成風。大らかさと繊細さの対比がいい。そんなふたりの、深いところでのつながりが見えてくる点にグッときた。
何より印象的なのは舞台となる横須賀の風景。どぶ板通りの商店街のわい雑な空気感も、車で駆け抜ける海岸通りの爽快感も、この地で生きる者の息吹を確かに匂わせる。『線は、僕を描く』でも土地の風景を物語にうまく溶け込ませた小泉監督のグッドジョブ。
寺尾聰の唄声が沁みる
『ちはやふる』シリーズや『線は、僕を描く』の小泉徳宏監督最新作ということでやはり見ておきたい一本。記憶が消えゆく中でも歌への想いだけは残り続ける父親を寺尾聰が好演。当たり前と言えば当たり前ですが、本当に歌が上手い。考えてみれば年齢的なことを考えつつ演技が巧く、歌も巧いという条件で俳優を辿っていくと寺尾聰に辿り着くのかもしれません。受け手役となった松坂桃李や松坂慶子を筆頭に隅々まで、”素敵な好意の持ち主”が登場して映画を暖かいものになっています。音楽をテーマにした映画も多い小泉監督の演出も手堅いです。これで上映時間が93分というのも好感が持てます。




















