九龍ジェネリックロマンス (2025):映画短評
ライター3人の平均評価: 3.3
原作ファンに向けてのアピールは十分!
ロケ地は台湾で、挨拶は「ニーハオ」と“ジェネリック九龍”を感じさせ、『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』好きから反感を買いそうな作り。とはいえ、再ブームのY2K&サイバーパンク感を醸し出すなか、「アニメ版」と対称的なオリジナルラストを用意するなど、原作ファンに向けてのアピールは十分。しかも、喫煙姿もハマる吉岡里帆の令子に、ミスキャストに思えながら『OUT』の副総長をマイルドにした水上恒司演じる工藤がいい。ただ、前作『君は放課後インソムニア』同様、美味しいお題や素材を生かしきれず、息切れしてしまう池田千尋監督らしさが悔やまれる。この展開だけに、ケレン味が欲しかった。
懐かしさと恋しさはイコール……なのか!?
大傑作『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』の後に公開されるのは映画ファン的には割を食った感もあるが、原作のファンには待望か。同じ九龍城砦を舞台にしているが、こちらは香港ではなく台湾ロケで、しかもそれはバーチャルリアリティの場という設定だ。
今は存在しない城砦をノスタルジーの場に据え、懐かしさと恋しさの共通点を問う。そこにラブストーリーを転がす妙。誰かに恋しているのか、それとも場所に恋をしているのか、その微妙なラインの描写が面白い。
脱・ぬるま湯というメッセージの点では『夢の涯てまでも』『ざわざわ下北沢』に通じるものが。吉岡里帆の抑制の効いた演技も絶妙。
恋愛劇モードの吉岡里帆を堪能
映画、ドラマ共に多くのジャンルで活躍している吉岡里帆ですが、特に映画に関してはここまでストレートなラブストーリーはなかなか無いので、見ていて嬉しくなる一本です。明るく陽性なキャラクターの吉岡里帆ですが、そのイメージ故に逆にラブストーリーは難しかったのかもしれませんね。そんな中でちょっと変化球な設定でそれでも”自分の恋”に対して強く生きるヒロインの姿はとても魅力的でした。本人は意外に骨太で硬派な作品選びをしているように見えますができればこの路線も時折見たいところです。これまでの作品でも楽しませてくれた池田千尋監督という事でも注目です。




















