MELT メルト (2023):映画短評
ライター2人の平均評価: 4
金田一のいないベルギー版『本陣殺人事件』(青春残酷篇)
「エヴァ」という名の女性が数年ぶりに故郷の村へと戻る。車のトランクには、大きな氷の塊を積んでいる。そこから連想ゲームが筆者の中で始まった――氷はMELT=溶けていく。流れる水滴は蒸発する。が、いつか(涙)雨となって地上へと再帰するだろう。
13歳の少女時代。子供たちの残酷なパワーバランス。『本陣殺人事件』ばりに哀しすぎる、その“完全犯罪”。本作で監督デビューしたフィーラ・バーテンスは共同脚本に男性を入れ、公正を保ち、そして数々の「胸引き裂かれるシーン」は、長年演技者であるからこそ細心の注意を払って撮り得たもの。エヴァの心を襲うフラッシュバックを、まさに映画的なフラッシュバックで体験させる。
いっそ溶けてなくなりたい……童心の恐ろしき終焉
子どもの残酷性はよく語られるところで、頻繁に映画の題材にもなってきたが、本作で描かれるそれは痛ましさそのものだ。
どこか影のある若い女性と、思春期にさしかかった時期の彼女を並行して描きながら、そのとき何が起きたのかを明かしていく。サスペンスフルな展開に引き付けられつつ、やがて訪れる残酷に言葉を失うしかない。
後味の良い作品ではないが、それゆえのパワーがあるのも事実。女性監督バーテンスの視線の鋭さはもちろん、子役の演技、ラストに流れる主題歌の“大人になりたいと望んだとき、無邪気さは跡形もなく消えた”というフレーズが深く突き刺さる。痛い。




















