Dear Stranger/ディア・ストレンジャー (2025):映画短評
ライター4人の平均評価: 3
西島秀俊の国際化にますます期待
ニューヨークでエリートとして生きる日本生まれの日本人という主人公は、アメリカの映画にまず出てこないが、実際には存在する。国籍の違うアジア系同士のカップルという設定、アイデンティティというテーマも、長く現地に住む人にとってはリアル。ステレオタイプではない日本人を共感できる状況で描けるのは、やはり日本人の監督/脚本家だからこそ。そこに挑んでくれたことに拍手。西島秀俊は、全編英語であるだけでなく、インテリな内容の長いせりふもある役を見事にこなした。だが、「ドライブ・マイ・カー」が世界に証明したように、何も言わない時にも彼は観客の心をがっちりとつかんで映画に引き込む。彼の国際化にますます期待。
すべてが崩壊していく
キャスティングだけでなく、映画そのものが攻めまくっている今年最大の問題作。終始漂う不穏な空気感の下、不気味な人形や夫婦の心の空洞を表現した廃墟といった独特なヴィジュアルに、計算し尽くされた音響効果など、黒沢清監督をかなり意識したルックに加え、『ベスト・キッド:レジェンズ』と似て非なるN.Y.のロケーションも悪くない。ただ、あまりにアート寄りで、観客に委ね過ぎることもあり、138分の長尺が退屈に思えてしまうのも事実。同じ匂いを感じたウェイン・ワン監督の『女が眠る時』といい、ときに日本の市場から遠く離れた西島秀俊のぶっ飛んだ作品選びは興味深いが、やはりいい方向に転がってほしい。
観る者の感覚が試されつつ、西島秀俊のグローバル化は全肯定
「愛が試される」というキャッチコピーになぞらえるなら、「観る人の感覚が試される作品」か。誰もがすんなり没入できる作りではない分、その余白、登場人物の掴みきれぬ本心、言葉とは裏腹の関係性に、こちらは深く分け入る必要に迫られる。ただ、映像や音の効果が、本能を刺激する映画でもあるので、主人公が研究する廃墟の怪しくも蠱惑的なビジュアルや、他の映画とは明らかに違う車の中のエンジン音の使い方など、感覚が研ぎ澄まされるシーンも多発。
西島秀俊の国際化には改めて感心。「サニー」より、さらに英語のセリフがナチュラルで、クライマックスのハードなシーンなど、完全にNYインディーズ映画の“住人”という佇まいで驚いた。
心の内側を追い求める者たちの物語
真利子哲也監督がこれまでの作品にあったストレートな暴力性や熱量を巧くドラマの中に織り込むことで、新境地と言える展開を見せたヒューマンサスペンス。全編NYロケ、ほぼほぼ英語セリフというかなり挑戦的な作りの物語となっていて、色々な障壁もあったと思いますが西島秀俊とグイ・ルンメンという実力派コンビが見事に乗り越えました。廃墟と人形という内側がないモノに拘り続けるパートナー同士が、期せずして心の深淵という一番な内側にあるモノを覗かなくてはいけなくなる展開が非常に印象的でした。






















