トロン:アレス (2025):映画短評
ライター4人の平均評価: 4
厚さが増した新作
このブランドは特に映像面での挑戦が求められるという宿命のようなものを抱えているのですが、これがともすると物語の面で平坦なものになってしまいがちなることも…。そんな中での今作は現実世界にまで舞台を拡げたことで物語の分厚さが増し、結果として非常に楽しい娯楽SFアクションに仕上がりました。現実世界を舞台に据えることは賛否ありそうですが、これはこれで良い手だったと思います。ジャンル映画で苦戦しているジャレッド・レトですが今回は良かったです。そしてナイン・インチ・ネイルズの音楽、腹に響く重厚な音楽でした、画もそうですが音も良い劇場で是非。
AI時代に出るべくして出たエンタメ快作
クールな電脳ワールドを提供してきた『トロン』シリーズの最新作。新世代のIT革命児たちを主要な登場人物にしているが、これがなかなか興味深い。
自我に目覚めたAIという要素をベースにして、人間の悪意がそれを加速させるという展開。どれほど天才であっても、それを生む人間のモラルが欠如していれば、AIもそれを学習するということか。
極小のテーマに寄ってしまったが、もちろん主軸はエンタテインメントだ。サイバー空間のスピーディーなアクションの醍醐味もそのままに、パソコンが“マイコン”と呼ばれていた時代、すなわち1作目のオールドスクール的電脳世界をも再現していて、お腹いっぱいになった
ビジュアル表現で魅せる
ビジュアルで魅せる。このシリーズのデジタル世界で起きる現象の数々が、現実世界に出現するとしたら、それはどんな光景を見せてくれるのか。映画はそれを描き出す。ライト・サイクルが現実世界の夜の大都市を疾走し、その後に、デジタル世界同様、光る帯状の軌跡を残す。その情景を俯瞰でも描く。現実世界でディスク・バトルが光を散らし、レコグナイザーが建造物を破壊し、赤い流線的な光が街を縦横無尽に動き回る。設定の論理的整合性よりもビジュアル表現に注力して、このシリーズを継承。主張色と質感は、前作『トロン:レガシー』と対になり、前作は青く柔らかだったが、本作は赤く硬質。第1作だけでなく第2作とのリンクも見逃せない。
意外なほど世界観をすんなり受容。最後までクールな感覚に
43年前の『トロン』は革命的CGで伝説となるも、15年前の『レガシー』はイマイチ評価で無念。今回は…及第点に仕上がって安堵。AIプログラムを実体化し、最強戦士を作るという、どこまでも複雑に描けそうな基本を、意外なほどシンプルに、観やすくビジュアル設計。「ハッキング」もプログラムを擬人化したりして、斬新&わかりやすく映像化(コミカルではない)。この流れにスムーズに乗っていけば、プログラムであるアレスが、感情的に人間に近づく流れもすんなり受け入れられるはず。
「ターミネーター」や「アバター」も重なりつつ、鮮やかなネオンの色使い、音楽の効果で、最後までカッコいいアクション映画の洗礼を受けている感覚。






















