DROP/ドロップ (2025):映画短評
ライター5人の平均評価: 3
信頼と安心のクリストファー・ランドン監督作なのに!?
タイトル通り、共有ソフトAirDrop機能を巧みに使ったサスペンス・スリラー。シングルマザーのヒロインがマチアプで出会った相手の初デート、笑いを誘う「ベイビーシャーク」ねたなど、現代的に見えるも、ヒッチコックへの憧れが強調されたか、いろいろと無理が生じている。絶景が楽しめるレストランを舞台にしたワンシチュエーションものにしては、中盤の単調な展開が引っかかるなど、いろいろとツメが甘いのだ。ホラー映画好きにとって、信頼と安心のクリストファー・ランドン監督作だけに、ハズレとは言い切れないが、ランドン自身が脚本に絡んでいないところが、このような仕上がりになった所以か。
コンセプトはモダンで面白いのだが
マッチングアプリで会った人との初デート、他人からのスマホのメッセージ、防犯カメラ、DVなど、現代らしい要素が散りばめられた中で、「犯人はこの密室にいる誰なのか」という古典的なストーリーが展開。そのコンセプトは良く、スリリングな映画になる潜在性はあるのだが、あちこち現実味がなさすぎて、どんどん緊張感が薄れる。「ハッピー・デス・デイ」のランドン監督だし、ユーモアを入れたいのはわかるけれども、とくに終盤のせりふは「こんな状況でこれは言わないだろう」と呆れた。クライマックスのオチも同様。ただし、レストランのウエイターのコミカルさは悪くない。95分ひたすら突っ走るので、単純に楽しむのは可能かも。
現代的ツールを生かしたウェルメイドサスペンス
『ハッピー・デス・デイ』『ザ・スウィッチ』のランドン監督の新作ということで期待して観たが、サスペンス演出の巧さは健在。
“ドロップ”という現代的なスマホツールの特性を生かした物語はスリリングで、スマホを手放せない見ず知らずの他人に囲まれているという状況が生きた。ヒロインのトラウマ描写もランドン作品らしく切実で、共感を引き寄せるに十分。
伏線回収に雑な点はあるものの、最初から最後までスリリングで夢中になれる。主人公M・フェイヒーの熱演はもちろん、やたらと忍耐強い(?)デート相手を演じたB・スクレナーの妙演も光る。
ヒッチコック的技巧も光るワンシチュエーション・スリラー
マッチングアプリで知り合った相手と初デートにこぎつけたシングルマザー。ところが、レストランの席に着くと謎の人物からファイル共有ソフトでメッセージが入り、「デート相手の男を殺せ」「さもなければ家で留守番している息子の命はない」と命令される。店内のどこからかスマホで監視している脅迫者。初対面の男性の命か、それとも最愛の息子の命か。シンプルなプロットを最大限に活かしたストーリー展開はなかなかスリリング。実はDVサバイバーだったヒロインの複雑な心理が絡むことで、フェミニズム映画としての魅力も兼ね備える。今のデジタル時代にヒッチコックが生きていたら、恐らくこんな映画を撮っていたに違いない。
いつも周囲の誰かがスマホをいじっている
今、メッセージを送ってきた犯人は、この瞬間に自分を見ている、と気づいて周囲を見回すと、ほとんどの人がスマホをいじっている。そもそも目の前にいるアプリで出会った人物は、本当はどんな素性か分からない。その状況がリアル。メッセージアプリやマッチングアプリが当たり前になった現状をフルに活かして、サスペンスを組み立てる。
その状況下で、犯人探しの謎解きと、ヒロインがどうやって犯人の指令を回避するのかという知恵比べ、2つのスリルが同時進行。著名な俳優がいないのも謎解きに適してる。監督は『ハッピー・デス・デイ』のクリストファー・ランドン。こういう映画には必須のストーリー面の仕掛けも抜かりない。























