ローズ家~崖っぷちの夫婦~ (2025):映画短評
ライター3人の平均評価: 3.3
英国実力派2人なので最悪の夫婦ゲンカにも品格をプラス
前回の映画化に比べて毒々しくならないのは、主演2人に備わった英国っぽいノーブルさ、品の良さが自然と醸し出されているからか。監督は持ち前のコメディ才能を生かし、2人の呆気にとられるほどの激しい出会いシーンから、後半の修羅場的バトルまで、基本「笑い」を優先した演出で仕上げていく。そこをコールマンとカンバーバッチが“余裕”の演技で応えるので、ナンセンスさは消失。料理、建築といった職業が“おしゃれな映画”の装いも加味。
ローズ家の子供たちは感受性の強い年代。さぞ辛かろう…と予想するも、彼らは頭脳明晰で、醒めた目で夫婦ゲンカを観察してるのが救い。彼らの目線があるから、われわれも気楽に観ていられるのかも。
カンバーバッチの毒舌の切れ味にシビレる
カンバーバッチとコールマン、英国の名優2人が、いかにも英国流のちょっと皮肉っぽい知的なジョークを投げつけ合う、その丁々発止のやりとりにシビレる。とくに、カンバーバッチがあの魅惑的な声で静かに放つ、嫌味なジョークの切れ味といったら。カンバーバッチと脚本家トニー・マクナマラが5年間にわたって脚本を練り上げ、しかも撮影現場は"アドリブ天国"だったとのことで、どこが彼のアドリブなのか想像するのも楽しい。
しかしこの2人、側から見ていると、辛口なユーモアのセンスが見事にそっくりで、こんなにセンスが合う人間は滅多にいないから貴重な相棒だと痛感するが、本人たちがそれに気づかないのも"夫婦あるある"か。
アップデートが現代の観客に共感を呼ぶ
「ローズ家の戦争」の夫婦はいかにも80年代だが、今作はしっかりアップデート。自分のキャリアが低迷する中、妻が成功することに複雑さを感じる男のエゴとプライド。妻は支えてくれているのに、 客観的な成功にとらわれ、その価値観から逃れられないのは夫自身。そんなところがかなりリアル。
さらに、建築家(夫)、シェフ(妻)という職業設定が、ビジュアルを面白くしている。だが、映画のはじめで若い頃の運命的な出会いをきちんと描き、「あんなに愛し合っていたのに」と思わせるところやダークなユーモアのラストは同じで、オリジナルへの敬意もたっぷり。今回は猫が死なないのも嬉しいアップデートなので、猫好きはご安心を!






















