ペンギン・レッスン (2024):映画短評
ライター2人の平均評価: 3
皮肉屋の英国人教師、ペンギンに学ぶ
さまざまなものに向き合うことを避けていた男が、やがて向き合うようになる物語----というと生真面目なドラマのように聞こえるが、映画は軽やかでユーモアたっぷり。何しろ主人公コンビは、小さなペンギンと、コメディアン出身の英国俳優スティーヴ・クーガン演じる、すました顔で皮肉なジョークを言ってばかりいる英国人気質の教師なのだ。
1976年の政治的混乱下のアルゼンチン、名門寄宿学校の英語教師に赴任した英国人が、自分の思い通りにはならないペンギンと生活し、やがてそれまで目を逸らしてきた周囲の状況を直視し、自分の人生に向き合うようになる。『フル・モンティ』のピーター・カッタネオ監督のまなざしが暖かい。
心温まる話に当時の暗い政治状況をミックス
監督は「フル・モンティ」のピーター・カッタネオ、脚本は「あなたを抱きしめる日まで」、「僕たちのラストステージ」でスティーブ・クーガンと組んだジェフ・ホープ。この人たちなら心温まる人間ドラマになるのは確実。だが、1976年のアルゼンチンが舞台とあり、軍事独裁政権下の厳しい状況も、原作の回顧録以上に盛り込んだ。そこは主人公ミッチェルの個人的ジャーニーの一部となるのだが、深刻なテーマだけに、やや都合の良いラストも含め、扱い方には意見が分かれるかも。生徒のせりふにも出てくるようにペンギンはメタファーで、メッセージのある物語。クーガンの抑えた演技が、説教くさくない、受け入れやすい映画にしている。




















