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フランケンシュタイン (2025):映画短評

2025年11月7日公開 149分

フランケンシュタイン

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.5

猿渡 由紀

人間について多数の複雑なテーマが織り込まれている

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ギレルモ・デル・トロが万を期して実現させた情熱のプロジェクト。自身が昔から魅了されてきたフランケンシュタインを、愛、共感、同情をたっぷり注ぎ込みつつ描いた。そこには、父と息子、兄と弟の関係、生と死、倫理観、何かを作り出すことに伴う責任とそこのまつわる傲慢など、人間についてのあらゆる複雑なテーマが織り込まれている。バイオレンスが容赦ない一方で、静けさにあふれるシーンも美しい。キャスティングは完璧。ミア・ゴスは当時の絵画に描かれた女性のような存在感を持ち、ジェイコブ・エロディは特殊メイクに覆われつつも観客の心を揺さぶる演技を見せる。できるだけ大きなスクリーンで堪能したい傑作。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

「東宝版」も含む、デル・トロのモンスター愛

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

原作通り、舞台は北極海で始まるも、怪物のヴィジュアルが「従来のモノ」と異なってたり、あの名ゼリフが発せられない。とはいえ、怪物を創造したヴィクター視点で語られる「第一部」から一転、被創造物である怪物の視点で語られる「第二部」ではデル・トロ監督のモンスターへの偏愛が爆発! やはり「東宝版」を意識している部分もあり、そういう意味では、『シェイプ・オブ・ウォーター』に近い感覚といえる。そして、まるで絵画を観ているようなゴシックな世界観に映えまくるミア・ゴスの存在感。彼女演じるエリザベスと怪物のシーンの物足りなさなど、149分では語りつくせない映画館向けの一作である。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

独自の映像美、独自の視点で、描き直す

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 壁に奇妙な浮き彫りのある実験室。そこに置かれた人体を加工した何か。アーチ型の天井が連なる地下室。研究者の夢想の中に何度も現れる、炎に燃え上がる天使像。男が一目で心奪われるとき、その女性の顔を覆うヴェールの深い緑青色。19世紀ヨーロッパにデル・トロ監督の趣味を掛け合わせた、荘厳で幻想的な世界が酔わせてくれる。

 デル・トロが生涯すっと映画化を熱望していたフランケンシュタインの物語を、彼独自の視点から描き直す。創造者の物語と、被創造者の物語を、等価に描く。さらに"父と子"のモチーフに光を当てる。最後の光景には好き嫌いが分かれるかもしれないが、監督が描きたかったものは明確に伝わってくる。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

隅々に行き渡るギレルモの創作愛、美麗モンスターの苦悶に陶酔

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

監督と題材の最高レベルでの合体に打ち震える一作。
生命を失った肉体をどう動かすか。その初期装置がマニア心に火をつけ、全編に色、および図形とデザインに隠れた意味を張り巡らせ、極上アートを完成。ポイントのアクションでは衝撃&狂気が一気に襲いかかる演出で、エンタメのサービス精神も万全。そしてエルヴィスも演じたJ・エロルディにより、モンスターの悲哀がより一層、増幅された。北の海の船、主人公の研究所などVFXを極力抑え、リアルなセットで捉えた光景は、明らかに俳優の生々しい動きにも影響を与えたと感じる。
原作テーマと現代への提起のバランスも絶妙。
異様な音響の効果も含め、やはり劇場での体験を推奨したい。

この短評にはネタバレを含んでいます
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