旅人の必需品 (2024):映画短評
意思疎通の課題を再定義する美しいエセー
小さなお話に宿した普遍的な輝き。ホン・サンス監督×イザベル・ユペール主演の三度目のタッグ。習作感があった前二作に対し、今回は滋味深く洗練された名篇だ。緑のカーディガンを纏った謎のフランス人女性イリスは、ソウルの街を軽やかに漂いながら人と人の距離を測り直す。韓国語を解さず英語を介して仏語を教える彼女の姿は、翻訳を通じてリアルな感情を伝える難しさと可能性を同時に示し、“言葉”というコミュニケーションツールの本質を露わにする。
反復と差異を活かした簡素な三幕構成は、日常の些細なやり取りを豊かな問いに変える。留学先の戦中日本にて27歳で獄死した詩人、尹東柱の詩篇が刻まれた石碑のインサートも印象的だ。
この短評にはネタバレを含んでいます




















