スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ (2026):映画短評
ライター7人の平均評価: 4.6
見事な物語の再点火!
新章の幕開けとして期待以上の仕上がりだ。前作『ノー・ウェイ・ホーム』で世界から忘れられた青年ピーターが、街の危機と呼応する様に内面を変容させる流れが胸に刺さる。初登場作『シビル・ウォー』から10年、トム・ホランドの成熟が物語の重心を引き締め、クレットン監督のしなやかな演出がアクションと感情を同じ熱量で跳ね上げる。世界の広がり方が気持ちいい。
そしてマーベルファンが待ち望んだ“本格合流”が物語の射程を一気に押し広げる。孤独を抱えた者たちの選択が互いを照らし合う構造の深み。キャラクター個々の痛みを鮮やかに浮かび上がらせ、異質のレイヤーが美しく共鳴する。MCUの未来を力強く更新する心底嬉しい快作。
「MCU愛」ダダ漏れ演出に、香港仕込みのアクション
“ミセス”が日本語版主題歌を歌う理由といえるセリフも登場する、「前章」脚本家コンビの続投はもちろん、「ワンダーマン」を手掛けたデスティン・ダニエル・クレットン監督の「MCU愛」が随所にダダ漏れ。これが「前章」に勝るとも劣らない「新章」の幕開けを飾ることができた理由だ。ぼっちとなったピーター・パーカーの成長物語に絡む、出オチで終わらないハルクやパニッシャーとの関係性に、まさかのサプライズ展開! 『シャンチー』を成功に導いたブラッドリー・ジェームス・アランの後継者として、第2班監督となったペン・チャン指導によるワイヤーワークを多用したリアルな肉弾戦アクションもお見事だ。
世界が変わっても、ピーターは“親愛なる隣人”だった
誰にも正体を知られていない世界にピーターが置かれる新章。ストレスから彼の肉体に異変が起こり、クモ要素が強くなるという展開に加え、孤独なピーターが他者との関係を築くドラマが味。
MJやネッドとの距離の縮め方はもちろん、パニッシャーとの張り合いや共闘から、新しい日々をつくっていくピーターの成長劇。それは同時に“親愛なる隣人”と呼ばれる所以を思い出させてもくれる。
トムホ版では初のピーターの有機ウェブ使用をはじめMCUファンには嬉しい要素も多いが、何といっても極めつけはあのキャラの初登場。今後のユニバースの広がりに期待を抱かずにいられない。
進化と深化、まさにスパイダーマンの物語
約5年の年月を経て登場したトム・ホランド版最新作。前作であれだけのことをやった中で、”さぁ、どうする!?”という思いで作品に挑みましたが、なるほど、こう来ましたか!?と思わず唸る一本となっていました。ハルクやパニッシャーが出てくるあたりも、ファンサービスに終わらせない機能を持たせていてお見事の一言です。トム・ホランドらキャスト陣も前3作の後を継いだスタッフ陣もかなりのプレッシャーがあったと思いますが、それに押しつぶされることなく、むしろその重圧を楽しんでいるような部分すら感じさせます。観客の反応がとても楽しみです。
失ったものも取り戻せる。その希望で忘れがたい後味に
前作の結末は、やるせなさで胸かきむしられたが、今回は別方向で心に染み渡る最高のラストが用意された。他にも似た後味の作品があるが、センス満点のエンドクレジットと共に、このラストシーンは何度も脳内で反芻し、幸せな気分に浸れる。やはりスパイダーマン映画は特別だ。
前3部作のワッツに代わり、監督を任されたクレットンはアクション演出で安定感を示しつつ、ブラウン系のシックな感じに仕上げた全体の色調や、人物の顔に横から照明を当てて陰影を作るレンブラント絵画的な映像にこだわり、それらがドラマに効果的で感心。街をスイングして移動する“おなじみ”の描写でも、スイングの反復がピーターの虚しさを伝えるなど意図も明確。
待ちわびた甲斐のあるエモーショナルな快作
人々の記憶からピーター・パーカーの存在が抹消されて4年。生活の全てをスパイダーマンとしての活動に費やし、彼自身が素顔の自分を忘れかけてしまった今、それを象徴するかのようにスパイダーのDNAがピーターの肉体を乗っ取り始め、さらに未知の新たな脅威が襲い掛かる。これはいわば、「無邪気で純粋で無鉄砲な少年」だったピーターが、孤独感と喪失感を乗り越えて「酸いも甘いも噛み分けた大人」へと成長する物語。意外な正体を秘めた新たな敵、同じような苦悩を共有するパニッシャーとの友情、そしてMJやネッドとの思いがけない再会。それらの全てが大きなテーマへと収束する脚本は優秀。ファンの期待に応えるに十分な快作だ。
スパイダーマンとは何かを再認識させる
スパイダーマンとは、ピーター・パーカーの青春ドラマであり、成長物語である。本作はそれを再認識させてくれる。そして、トム・ホランド版に、他のスパイダーマンとは別の魅力があるのは、彼にはMJとネッドがいるからだとも痛感させる。スパイダーマンのウェブスリングの体感が、サム・ライミ監督版とはまったく違う、シャープでソリッドな感触なのは、ピーターの成長の反映か。
アクションは山盛り。特に東洋系忍者集団ザ・ハンドの上下方向の空間移動を多用したアクロバティックな動きと陣形は『シャン・チー/テン・リングスの伝説』のデスティン・ダニエル・クレットン監督の面目躍如。そしてファン待望の出来事が待っている。



























