「状況」に没入させる2DのVR実験が、映画の可能性を拡げた

一貫して画の威力と音の効果で押しまくり、「物語」ではなく、死地からの脱出を懸けた「状況」に没入させる。顔の見えぬ相手には敵意すら湧かず、秒針音をサンプリングした音響によって焦燥感はマックスとなり、純粋に生き延びたいという切実さだけが募る。ノーラン映画の「時間」――『メメント』の逆行、『インセプション』の侵入、『インターステラー』の抵抗。本作では、陸海空のスパンの異なる時間軸を交差させた。視点と時間の魔術により、タイムリミットという真の敵に怯えながら、浜辺を逃げ惑い、海中に沈み、空を舞う。IMAXを駆使し、2DでVR効果を体感させて映画の未知なる可能性を押し広げる壮大な実験は、実に刺激的だ。