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ぼんとリンちゃん (2014):映画短評

ぼんとリンちゃん (2014)

2014年9月20日公開 91分

ぼんとリンちゃん
(C) ぼんとリンちゃん

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 5

なかざわひでゆき

オタクは生き様だということを知らしめてくれる

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 主人公がBLオタク男女という特殊な人種ゆえ、初めは取っつきにくく感じる向きもあるだろう。しかし、一途なまでに“腐女子”という生き様と向き合うヒロイン、ぼんちゃんの姿に、やがて熱い共感を禁じ得なくなっていくはずだ。
 物語は一足先に腐女子を卒業した肉便器ちゃん(これまた凄いネーミングだけど)の奪還作戦。そこへ、中途半端に世間を悟った社会人オタクも加わり、現実と妄想の狭間に揺れる夢追い人たちのリアルな人生模様が描かれる。
 オタクとは本来、信念であり理想であり人生である。己の道を果敢に貫くぼんちゃんの佐倉絵麻、漫画から抜け出てきたような美少年リンちゃんの高杉真宙、どちらも絶妙な当たり役だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

泣いたよ。世界と闘う孤高の腐女子!

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

なにかと「アナル」と口に出す腐女子ぼんちゃん(佐倉絵麻)を中心とした芝居の作り込みが圧巻! そして彼女のキャラは、小林啓一監督の前作『ももいろそらを』の女子高生いづみ(池田愛)のアップデートと言っていい。感受性が強く、ある種潔癖ゆえ、世界を斜め上から目線で見るタイプ。

監督はそんなヒロインの「青臭さ」を猛烈な試練にかける。脳内論理を超える破壊力を持った複雑な現実。ぼんちゃんは意外なラスボスとの対決を得て高次の思索に入り込む。

感動的なのは、監督は必死に世界と闘う彼女(達)の「青臭さ」を愛してるんだなってこと。モチーフの重なる吉田恵輔監督が体験派寄りだとしたら、小林監督は理念派の傑物ですな。

この短評にはネタバレを含んでいます
ミルクマン斉藤

小林啓一は間違いなく、未知なる「今」を観ている。

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

いくらリサーチしたってこんな台詞書けるもんじゃないだろ。オタク、それもBL好き男女の思考回路に則っためくるめく言葉の洪水。オタク的術語ともいうべき耳馴染みのない単語の嵐。そっち系門外漢なら冒頭十数分は置いてけぼり確実だが、かなりの頻度でズドンズドンと発射される名言にいつしかのめりこまさせられていく(主役ふたりの非BLな妹たちが弛緩しつつ吐き捨てる言葉も、多くの観客にとって作品世界を相対化する手助けをしてくれる)。全編を貫く長回しは「オタクvsひと足先にリアルな性に目覚めた肉便器」とのバトルで頂点を迎えるが、そこでオタクは敗北せずさらなる名言を吐くのが素晴らしいじゃないか。傑作!

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

天才監督誕生を告げる怒涛の91分!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

優れたデビュー作を撮る監督は山ほどいるが、小林啓一監督は『ももいろそらを』と本作で、ホンモノであることを証明した。親友を救うため、東京にきた腐女子とオタク男子のRPG的体験…ではあるが、初っ端からオタク狩りに遭うように、次々期待と予測を裏切る展開。シニカルかつ温かい視点は『桐島、部活やめるってよ』の映画部にも近く、それゆえハードボイルドなヒロインの口から、膨大な情報量と独自の哲学がとめどなく溢れ出る。ホンモノの好敵手といえる山戸結希監督には絶対描けない処女と非処女が衝突する15分長回しなど、怖いほどのリアルに感服。本編で描かれなかった謎を補完したノベライズを含み、これぞ2014年ベストワン!

この短評にはネタバレを含んでいます
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