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女王陛下のお気に入り (2018):映画短評

女王陛下のお気に入り (2018)

2019年2月15日公開 120分

女王陛下のお気に入り
(C) 2018 Twentieth Century Fox

ライター7人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

相馬 学

権力をめぐる毒気たっぷりレディース・バトル

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 人間の醜さを浮き彫りにした宮廷愛憎劇という点で『危険な関係』(88)を連想させるが、つくりはより現代的。セリフのシャープな切れ味や広角レンズを使った独得の映像表現に魅了された。

 権力を着る者、行使する者、求める者の、それぞれの闇を見つめるドラマは、三者のぶつかり合いによってスリルを増す。ブラックな笑いも効いており、それが政治をも動かしてしまう点にキツい毒がにじみ出る。ラスト・シーンは、とりわけ強烈。

 そろってアカデミー賞候補となって女優陣3人のアンサンブルも見どころ。誰もが妙演を見せるが、現代っ子のように“F●●k!”を連発するはみ出しキャラのエマ・ストーンに、個人的には一票を。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

悪趣味スレスレのコメディへと昇華された宮廷愛憎劇

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 舞台は18世紀初頭のイングランド。孤独で不機嫌でいじけた足腰の弱いアン女王の寵愛を巡って、宮廷で絶大な影響力を誇る狡猾な策略家サラ・チャーチル公爵夫人と、その座を虎視眈々と狙う没落貴族の娘アビゲイルが激しく火花を散らせる。『ロブスター』や『聖なる鹿殺し』のヨルゴス・ランティモス作品としては意外なほどに分かりやすい映画だが、3人の女性の野心と愛憎が政治や戦争を振り回していく様はシニカルで辛辣なブラックユーモアに満ちており、ほとんど悪趣味スレスレのコメディへと昇華されている。相変わらずこの監督は意地が悪い(笑)。端正で折り目正しい従来の英国歴史絵巻とは一線を画する生々しさと奔放さは新鮮な魅力だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

女だから、男だからと決めたくないが女同士ゆえの濃い内容

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

嫉妬や確執、騙し合い、権力、上昇志向など、人間のドス黒い、しかし本能的な欲求を、王宮ドラマに巧みに絡ませる。高貴さと低俗さの境界があやふやになっていく快感! 女王役オリヴィア・コールマンの怪演も、その快感の背中を押す。女同士だからこそ、おぞましいほどの悪趣味感も素直に楽しめるのか。これが男女だったらよくある話だし、男同士だったら逆に生ぬるくなる……など想像力も掻き立てられた。

歴史を振り返っても、そして現在の世界を眺めても、国のリーダーの地位に立つ者がそれほど有能でなくても、何とかなってしまうのは、今作の女王を観ているとつくづく納得。監督の現代社会へのシニカルな視線が込められているのだろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

イギリス王室内のマウンティングに女心がうずく

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

女王の寵愛を争う侍女のバトルが実話とはびっくり。それぞれが政党や貴族という国政の中枢を担う男たちを味方につけ、権力を手中に収めようと女王の気を引く深謀遠慮を張り巡らせるあたりが実に女子っぽい。ランティモス監督が女性に意地悪な視線を向けているのかと思ったが、家督を継げない女性貴族の生き残り術と長年に渡ってサバイバルしてきた女性への敬意なのだろう。賞レースで絶賛されている女優3人は見事な快演を披露し、女王の寝室周りの工夫がユニークな古城や美術、豪華な衣装と見どころ満載。R・ワイズ演じるレディ・サラはダイアナ妃の祖先でもあり、マウンティングは現代にも脈々と受け継がれたと勝手に納得。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

ピーター・グリーナウェイ監督好きなら是非!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

近年の英国王室映画といえば、ジュディ・デンチあたりの大御所が名演を魅せる正統派ばかりだったが、毒っ気たっぷりのヨルゴス・ランティモス監督が手掛けると、ピーター・グリーナウェイ監督作(『英国式庭園殺人事件』)風になる化学反応! 格調高く聴こえるミニマルな劇伴もマイケル・ナイマン風で、広角レンズやウィップ・パンによるアーティスティックなショットも、新しくもあり、懐かしい。いささか単調になる感もあるが、オリヴィア・コールマンの存在感が引っ張ってくれる。彼女演じるアン王女を取り巻く、下品スレスレな女の嫌がらせ合戦は、「大奥」要素もあり、グリーナウェイ以上に女性ウケするだろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

格調高い美術とブラックな笑い、そして一片の真実

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 美術も衣装も徹底的に格調高い。登場人物は宮廷の高貴なご身分の方々。それなのに、描かれる物語はどこまでも下世話で下品で滑稽。この取り合わせが、むちゃ痛快。映画はこれがそういうブラックコメディであることを、冒頭近く、宮廷の舞踏会で人々にとんでもない格好でダンスを踊らせて宣言する。
 そんな笑っちゃうような策略と虚飾ばかりはびこる宮廷コメディの中で、女王の孤独だけが本物。この演出を可能にしたのが、オリヴィア・コールマンの力。女王を、ときには愚かで滑稽にも見えるもう若くないひとりの女性として演じ、その心情の決して笑えない部分までをもリアルに体現している。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

英国王室物も、この人がやるとこうなる

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

ランティモスの過去作品、とくに最近の「聖なる鹿殺し〜」に比べれば、過激さは相当に抑えられている。それでも、18世紀の英国王室ドラマをこんな形で描く人はほかにいないだろう。毒はありつつも、絶妙な形でユーモアや哀れさを交えるのが今作。野心や嘘、足の引っ張り合いは政治につきものだが、それをやるのが女たちというのがまずおもしろい。権力者なのに、いや、だからこそ振り回されるかっこよくない女王を演じるオリヴィア・コールマンは、最高。だが、サバイバルのために彼女に取り入るアビゲイルを演じるエマ・ストーンも大きく光る。後味はあまり良くないが、それもまたランティモスということで。

この短評にはネタバレを含んでいます
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