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カード・カウンター (2021):映画短評

カード・カウンター (2021)

2023年6月16日公開 112分

カード・カウンター
(C) 2021 Focus Features. A Comcast Company.

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.8

ミルクマン斉藤

オスカー・アイザックのベストアクト。

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

P.シュレイダーらしい禁欲的かつアンニュイな作風は健在。多くの会話が正面フィクスの切り返しとか、タイトルデザインも含め彼が敬愛する小津安二郎の影響は大きい。また帰還兵の苦悩も『タクシードライバー』『ローリング・サンダー』など過去作と通じるもの。彼の脚本家デビューは『ザ・ヤクザ』であるが、本作の主人公は節度を守り、金に執着しないギャンブラーであり、流れ者の博奕打ちを彷彿とさせる。そこにはアブグレイブ刑務所で拷問(所内での主観長回し移動1ショットは酸鼻な描写ではあるがものすごい)を受けたトラウマがあるのだ。しかし全編を通じて、そこはかとなくロマンティックな雰囲気が漂っているのがいい。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

これぞ特異なるシュレイダー節

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

真の鬼才と呼ぶべき作家/職人、ポール・シュレイダーの本領を味わえる快作だ。O・アイザック扮するサムライ的(あるいは阿左田哲也的)ギャンブラーの凌ぎを描くジャンル映画かと思いきや、大きく変容。ブレッソン式のナレーション=モノローグから始まり、やがて贖罪と復讐の主題を携えて独自の展開へと突入していく。

イラク戦争時、アブグレイブ刑務所での(加害者の立場を強いられた者としての)PTSD。この点から『タクシードライバー』以上に連想するのは『ローリング・サンダー』だが、シュレイダーが意識的に繋げたのは『ライト・スリーパー』。W・デフォーという共通のキャスト、両作の音楽と主人公の刺青などに注意されたし。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

ゆっくりと紐解かれ、意外な結末へと導く

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

冒頭のモノローグからさすがポール・シュレイダーの脚本と感じさせ、引き込まれていく。寡黙で冷静に見える主人公ウィリアムがどうして刑務所に入ることになったのか、その背景が次第に明かされていくと、このキャラクターとストーリーはますます興味深くなる。話はスローなペースで進むが、最後には予想しなかった展開と、余韻を感じさせるラストが待ち受ける。内側に多くのものを抱えるウィリアムを繊細に演じるオスカー・アイザックは絶賛もの。お相手役にコメディエンヌのティファニー・ハディッシュをキャストしたのも、新鮮でセンスが良い。彼女が持つ自然なチャーミングさは、ダークなこの映画が必要とする一抹の明るさを与える。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

古風なフィルム・ノワールの気配が漂う

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 とても古風なフィルム・ノワールの味。冒頭から何か良くないことが起きるに違いないという気配が漂い、やっぱりそうなっていく。夜、自動車を流していくときのあてどなさ、どこにも行きつかない感じ。過去の悪行を悔いて自分を罰し続けている男が、道を誤りそうな青年に出会って彼を救いたいと望むが、本人自身も自覚していないだろう青年の真の望みを読み間違える。監督・脚本はこういう世界が似合うポール・シュレイダー。

 主演のオスカー・アイザックは『スター・ウォーズ』続三部作も『ムーンナイト』も『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』ももちろんいいが、こういう寡黙な男を演じて、やっぱり巧い。

この短評にはネタバレを含んでいます
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