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月 (2023):映画短評

(2023)

2023年10月13日公開 144分

月
(C) 2023『月』製作委員会

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

斉藤 博昭

人間の生きる意味、本能に本気で向き合うとする作り手の気概

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

宮沢りえの主人公は小説家なのだが「震災について書いたのに、ちゃんと向き合ってない」と自作を批判される。本作の石井裕也監督の思いはそのセリフを反面教師にするように、覚悟をもって相模原やまゆり園の入所者殺傷事件に対峙したと感じる。
施設のシーンと事件へつながるプロセスと、主人公夫婦の苦悩。その分量、バランスをどう扱うかにも監督の苦心が見てとれ、様々な意見はあろうが、一本の映画として的確な構造になったのではないか。
メインの人物ほぼすべてが、人間として全否定される感覚を味わい、自分こそが何で生きているのか問われる恐ろしさ。相手への無意識な「上から目線」の発動に、幾度となく居たたまれない気分になった。

この短評にはネタバレを含んでいます
村松 健太郎

目を逸らさない覚悟をもって

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

これは近年の映画の中でもかなり上位に入る超問題作。厳密にいえば問題”提起”作品と言えるでしょう。実際に起きた事柄が元になっており、物語がどういう結末を迎えるかおおよその見当は付く映画ではありますが、それゆえに見るのに非常に覚悟がいる映画です。決して気楽に見てくださいとは言えない映画です。ただ、それを乗り越えて多くの人に見てもらいたい映画もあります。メインキャストはみな熱演を見せましたが、特に磯村勇斗はこの役柄を良く引き受けたなと思います。キャスト・スタッフの覚悟を是非、体感してください。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

ベストワンとしか言いようがない

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

どんな言葉も届かぬ凄まじさ。『茜色に焼かれる』のパワーをさらに超え、超重量級の映画作家の貌となった石井裕也が立ち現れる。相模原障害者施設殺傷事件をモチーフに(同事件を反映した先行作には大森立嗣の『タロウのバカ』がある)、寝たきり入所者の視座/想念から書かれた辺見庸の小説を果敢な豪華キャストと共に大胆に再創造した。

この映画を観ることは、人間存在の闇の奥底に独りゴンドラに乗って降りていくような体験と言えるだろうか。他人事で済ませぬ殺傷力。欺瞞や虚飾をぎりぎりまで剥いでいく真摯さ。『エレファント』の参照や井上陽水の名曲「東へ西へ」もこれ以上ないほどハマり、どこまでも消えぬ衝撃をもたらす。

この短評にはネタバレを含んでいます
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