エミリア・ペレス (2024):映画短評
エミリア・ペレス (2024)
ライター4人の平均評価: 3.8
男権社会を蹴り上げるようなゾーイのダンスがイカす!
オーディアールがミュージカルを撮ることに意外性を覚えつつも、見始めるとその力強さの虜になる。
Z・サルダナが怒りの歌&ダンスを炸裂させるオープニングから切れ味抜群。彼女は中盤でもインパクトのあるミュージカルシークエンスをこなしており、オスカー受賞も納得の存在感。歌とダンスの見せ場が物語の流れを止めず、むしろ加速させるつくりも秀逸だ。
図らずも場外で“出る杭”となったが、主演のガスコンのメロドラマティックな演技は本作のエモい部分を担い、気持ちを揺さぶってくる。ジェンダー云々というより、女性の生きづらさをしっかり見据えている点で骨太なドラマ。
世にも奇妙な物語
女性に生まれ変わったメキシコの麻薬王が、その手はずを整えた弁護士と再会して新たな行動に出る。これだけでもかなり突飛なお話ですが、しかもこの話をミュージカルで描くというという、どう見ても映画が破綻しそうな感じがする企画を、かなりの力業で映画として成り立たせています。ジャック・オーディアール監督がこう言う映画を撮ってくるとは思いませんでした。賞レースの展開は残念でしたが、やはり力のある映画です。アカデミー賞受賞のゾーイ・サルダナは受賞も納得の快演を見せてくれます。先が読めないということで近年屈指の一本と言えるでしょう。
弾丸飛び交う、人生リセット・ミュージカル
今年73歳になる名匠ジャック・オーディアール監督が「若いモンには負けねぇよ」と言わんばかりに、『パリ13区』に続いて放つ意欲作。「弾丸飛び交う、人生リセット・ミュージカル」というバズ・ラーマン監督ばりの離れ業をやっているのだが、社会派のくせに、例のメキシコ人キャストの問題など、ちょっとしたズレが面白さのカギとなる。巻き込まれキャラを演じたゾーイ・サルダナは、今年のオスカー受賞者において、いちばん納得だし、物語をかき回すクズ役のセレーナ・ゴメスも見事に大化け。現代社会における、さまざまなテーマを説教臭くなく描いたエンタメだけに、133分間楽しんだもの勝ちという一本だ。
大胆な作風・先鋭的テーマも印象は散漫で、じつに評価が難しい
フランス人監督がメキシコをメインの舞台にしてセリフの多くをスペイン語で撮り、カンヌやオスカーでも賞賛。主人公はトランスジェンダーで当事者の俳優が手術前/後を演じる。テーマも女性讃歌。この上なく「今の時代」らしい作品として必見。
一応ミュージカル映画だが、近年の同ジャンルに比べ、歌のシーンの唐突感がスゴい。そのあたりも新鮮。人間ドラマ、愛、アクション、コメディとジャンルも自由に行き来するチャレンジは、成否はともかくリスペクトだ。
“当事者”ガスコンの作品内での変貌ぶりには目を疑うも、全体の演技レベルはそこそこ。W主演と言っていいサルダナは、ダンス経験も試されたシーンの、全身のバランスが美しすぎ!