スタントマン 武替道 (2024):映画短評
ライター3人の平均評価: 4
裏方のリアルな現実を目の当たりにする!
ショッピングモールを舞台に壮絶アクションが展開される『ポリス・ストーリー/香港国際警察』オマージュなタイトルバックから、香港アクション愛が止まらない! とはいえ、主軸となるのはドキュメンタリー『カンフースタントマン 龍虎武師』でも描かれた“スタントマン残酷物語”。ブームは下火ながら、新旧世代のぶつかり合いや家族も巻き込まれるリアルな現実を叩きつける。既視感の強い浪花節演出も引っかかるなか、大御所トン・ワイが引退状態のアクション監督を演じる説得力で一点突破。『トワイライト・ウォリアーズ』のヒットなくして、日本では埋もれる可能性もあっただけに、いろんな意味で応援したくなる!
香港映画黄金時代への憧憬だけに終始しない佳作
かつて香港映画の黄金時代を支えながら、しかし危険な撮影でスタントマンを半身不随にさせて引退を余儀なくされ、家庭を顧みなかったため家族にも見放されたアクション監督が、旧友の誘いで数十年ぶりに現場復帰するものの、しかし安全性ガン無視&パワハラ上等な仕事姿勢で後輩たちの反感を買ってしまう。昔は命がけだったから、寝る間も惜しんで働いたから面白い映画を作れた。それは本当なのか?今や風前の灯火となってしまった香港映画、かつての黄金時代にオマージュを捧げつつ、その栄光の裏で犠牲を強いられた人々の痛みにも目を向け、香港映画を再興するなら新たなやり方を模索すべきだと訴える。懐古趣味に終始しない視点が良い。
アクション愛を装いつつ香港自体への熱い郷愁誘うセリフ数々に涙
冒頭の『ポリス・ストーリー』のほぼ再現で、キャストの“決め顔&ポーズ”といった演出で一気にタイムスリップするが、『トワイライト・ウォリアーズ』のラストから地続きの気分で観れば、終盤のセリフの数々が強烈に心を突き刺してくる。基本は香港アクション映画へのノスタルジーである本作が、失われつつある香港全体への悲哀と希望に転化する瞬間、涙腺を刺激。作品としてシンプルに評価すれば凡庸なものの、あちこちに溢れまくる「愛」が弱点を消し去っていく。これが映画のマジック。
テレンス・ラウは『トワイライト〜』以上にハマリ役。高難度スタントをこなしつつ、頼りなさや未熟さも醸し出せる資質で魂を受け継ぐ役割で共感を誘う。




















