でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男 (2025):映画短評
でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男 (2025)
ライター2人の平均評価: 4
三池崇史監督、久々の会心の一撃!
冒頭、『悪の教典』のハスミン(伊藤英明)を想起させる綾野剛のサイコパス演技から一気に引き込まれる三池崇史監督、久々の会心の一撃ともいえるハードな力作。「藪の中」どころじゃない双方の食い違いのキーマンとなるのは、もはやホラー化している柴咲コウ演じるモンスターペアレンツに、腹が立つほど胡散臭い亀梨和也のゴシップ記者。終盤には小林薫と北村一輝による白熱の法廷バトルが用意されるなど、直球なタイトルや『怪物』のような前半パートから想像される以上にエンタメ感が強く、カタルシスを感じさせる仕上がりに。そして、たとえ教師でなくとも起こり得る身近な恐怖が後を引きずる。
意外にエンタメ的に没入しやすい。綾野剛は異次元の瞬間が何度か
序盤、『怪物』のような流れを予感させつつ、思いのほか、わかりやすい展開に落ち着く。そこが物足りないと言えるも、誰もが入り込みやすいとも。
「教師の体罰」と「モンスターペアレンツ」の構造も、タイトルが示すように主軸となる視点は明らか。メディア問題など多くの社会派テーマは表層を掬い取り、素直に感情を持っていく、三池監督の演出は手堅い。「その場を収めるためだけの謝罪」「多くの人が信じれば真実に」という問題は、やがて教師という職を超え、ひとつ間違えれば誰もが経験するかもしれない恐怖へと変わる。
特に前半、観るものの混乱を喚起するうえで綾野剛の演技が凄まじい振幅。難しい役を軽々とこなす柴咲コウもさすが。