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でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男 (2025):映画短評

2025年6月27日公開 129分

でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男
(C) 2007 福田ますみ/新潮社 (C) 2025「でっちあげ」製作委員会

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

相馬 学

肉体ではなく精神を追い込む三池流ホラーの新境地

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 モンスターペアレンツや教育の問題に目配せした『怪物』の変奏曲と思わせつつも、そこは三池作品、濃密なエンタテインメントに寄せてくる。

 綾野剛の怪演に仰天する間もなく、柴咲コウの暴走がとめどなくゴーズオン。メディアリンチ、犬笛SNSによってジワジワと追い込まれる主人公の苦境は、観ていて胃が痛くなってくる。

 『オーディション』『インプリント〜ぼっけえ、きょうてえ〜』では肉体的な痛みを強調した三池監督だが、本作では観る者の精神をいたぶってくる。ある意味、三池監督らしいサディスティックホラー。この恐怖はリアルであるだけに、決して無視できない。

この短評にはネタバレを含んでいます
村松 健太郎

真実と事実

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

タイトル通り、ある真実が事実に変わっていく様を描くサスペンス。法廷劇であり会話劇でもあります。全く違う二つの側面から事象が描かれるためにメインキャストは同じ人物でありながら全く違う性格の持ち主てとして登場しているため、出演陣は一人二役と言ってもいい演じ分けを見せています。特に対立する二人を演じた綾野剛と柴咲コウのテクニックは見事の一言です。前半と後半で全く違うのでメリハリが効いていない来ないと映画に物語の波に乗れないこともあるかと思いますが、そこは三池崇史、流石の手腕を見せてくれます。共演陣で言えば小林薫の飄々とした弁護士キャラが最高でした。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

三池崇史監督、久々の会心の一撃!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

冒頭、『悪の教典』のハスミン(伊藤英明)を想起させる綾野剛のサイコパス演技から一気に引き込まれる三池崇史監督、久々の会心の一撃ともいえるハードな力作。「藪の中」どころじゃない双方の食い違いのキーマンとなるのは、もはやホラー化している柴咲コウ演じるモンスターペアレンツに、腹が立つほど胡散臭い亀梨和也のゴシップ記者。終盤には小林薫と北村一輝による白熱の法廷バトルが用意されるなど、直球なタイトルや『怪物』のような前半パートから想像される以上にエンタメ感が強く、カタルシスを感じさせる仕上がりに。そして、たとえ教師でなくとも起こり得る身近な恐怖が後を引きずる。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

意外にエンタメ的に没入しやすい。綾野剛は異次元の瞬間が何度か

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

序盤、『怪物』のような流れを予感させつつ、思いのほか、わかりやすい展開に落ち着く。そこが物足りないと言えるも、誰もが入り込みやすいとも。
「教師の体罰」と「モンスターペアレンツ」の構造も、タイトルが示すように主軸となる視点は明らか。メディア問題など多くの社会派テーマは表層を掬い取り、素直に感情を持っていく、三池監督の演出は手堅い。「その場を収めるためだけの謝罪」「多くの人が信じれば真実に」という問題は、やがて教師という職を超え、ひとつ間違えれば誰もが経験するかもしれない恐怖へと変わる。
特に前半、観るものの混乱を喚起するうえで綾野剛の演技が凄まじい振幅。難しい役を軽々とこなす柴咲コウもさすが。

この短評にはネタバレを含んでいます
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