ミーツ・ザ・ワールド (2025):映画短評
ライター3人の平均評価: 4
腐女子が飛び込んだ歌舞伎町という名のワンダーランド
奇しくも同日公開となった『愚か者の身分』と同じく、舞台は新宿歌舞伎町。同作は犯罪の世界を舞台にしていたが、本作は異なるアプローチでこの町の断面を描く。
キャバ嬢も腐女子もホストも、この町の磁場に反応して肩を寄せ合って生きている。悪事に手を染めずともやっていけるのは猥雑な町の懐の深さ。その居心地の良さを本作は的確にとらえていた。
もちろん現実的に、この町にいきなり飛び込むのはリスクが伴うし怖ろしいだろう。一方で、ゴールデン街のバーで初対面の人と良い酒を飲んだときのような感触も。空気がよどんだ世界でも、人は生きる道を模索する。歌舞伎町に“選ばれた”人間のファンタジーを見た。
迷える腐女子が夜の歌舞伎町から世界を知る
世間の「フツー」に違和感の拭えない自己肯定感低めな腐女子が、ひょんなことから自分と正反対のキャバ嬢と同居するようになり、歌舞伎町に生きる自由な人々との交流から様々な価値観があることを学び、やがて自分らしい生き方を肯定していくようになる。「世間知らずで未熟な迷える若者が世界を知る」というありがちな話だが、しかし登場人物各々の生きざまが投影されたリアルな台詞の持つ力強さ、実際に歌舞伎町でロケを行ったリアルな空気感、そして杉咲花の圧倒的にリアルな芝居が物語に説得力を与える。とても誠実で好感の持てる映画。若い頃に新宿二丁目の人々から世界を教えてもらった筆者自身の記憶がふと甦って懐かしくなった。
無双状態な杉咲花を堪能できる「歌舞伎町映画」
分かりやすいぐらいパブリックイメージなキャラ大集合かつ、「腐女子・イン・歌舞伎町」でもある金原ひとみ原作を、青春群像劇になると段違いに手腕が光る松居大悟監督が映画化。長回しによるオタク語りや美味そうな食事シーンなど、予想通り無双状態な杉咲花を堪能できる仕上がりではあるが、ホストを演じる板垣李光人は完全にファンを殺しにかかってくると思えば、サプライズ出演もあるなど、しっかりマスに向けても作られている。また、地元民から見ても、動線など「歌舞伎町映画」として、しっかり出来ているうえ、「水」の使い方やアカデミーサイズ(1.37:1)による箱庭感もハマっている。






















