てっぺんの向こうにあなたがいる (2025):映画短評
ライター2人の平均評価: 5
のんと吉永小百合の“二人一役”を実現させた製作陣に拍手!
登山の世界的エキスパート・田部井淳子をモデルに、のん(若年期)と吉永小百合(熟年以降)の“二人一役”を実現させた製作陣にまず拍手。これは巧い! で、ヒロインは「強烈な光を発する人」であり、その光を浴びて戸惑う家族(特に息子。演じたのは若葉竜也!)や女子登山クラブのメンバーの多層な心情も描かれる。
のんパートの1973年には石岡瑛子のアートディレクション、「女は明日に燃えるのです」というコピーが躍る渋谷PARCO開業時の有名ポスターが登場。吉永とは『北のカナリアたち』(12)以来の阪本順治監督はひとりの女性の軌跡と社会的動向を通し、その“てっぺん”と“裾野”の不可分な関係を謳い上げるのだった。
“てっぺん”を超えたとき、見えてくる人生の風景は?
好きなことに向けた情熱の強さ。それが人生を動かしていくことの凛々しさが、ひしひしと伝わってくる。
とにかく吉永小百合/のんふんする主人公が魅力的で、登山に向けたとてつもない熱量だけでなく、熱量ゆえに失うものもあることを浮き彫りにする。『北のカナリアたち』に続いて吉永と組んだ阪本順治監督の、温かみと切なさを込めた演出はおみごと。山々で主人公たちが見る風景も素晴らしく、山に登る理由を如実に表わしている。
タイトルの“あなた”が指すものは何なのか考えつつ観れば、本作の豊潤さがより深く理解できるのではないだろうか。





















