アニタ 反逆の女神 (2024):映画短評
ライター3人の平均評価: 4
ストーンズという狂騒に飛び込んだサバイバーの記録
1960年代後半~1970年代前・中半のストーンズを俯瞰したトニー・サンチェスの回顧録における、パレンバーグの歩みの記述は壮絶で衝撃的だった。が、本作には単なる“衝撃”で終わらない深みあり。
彼女が遺した手記に基づいていることに加え、ストーンズと関わる以前と以後の人生にも目配せ。つねに自分の脚で歩もうとした女性の人生の記録として歯応えがある。
“ストーンズが株式会社になった”のと歩調を合わせて放り出されたと本作は訴え、男権社会の強引さも浮き彫りに。それに翻弄されたパレンバーグの生は、彼女を知らない方にも訴えるものがある。魔性とかミューズとか、そんな言葉では語り切れないものがみえた。
ローリング・ストーンズのミューズ、その激しすぎる人生
スウィンギン60’sを象徴する世界的ファッション・モデルにして、『バーバレラ』などのカルト映画で活躍した映画スター、そしてローリング・ストーンズのミューズとして時代の最先端を行くアイコンだったアニタ・パレンバーグ。’17年に亡くなった彼女の波乱万丈な人生を、家族や友人らのインタビュー証言に記録映像、そして本人が書き残した回顧録の朗読(byスカーレット・ヨハンソン)によって綴るドキュメンタリーだ。やはり焦点となるのは、ブライアン・ジョーンズにキース・リチャーズ、ミック・ジャガーとの四角関係。あのキースをして「彼女のおかげで男になれた」と言わしめたアニタの、自由奔放かつ激しい生き様に痺れる。
“ガールパワー”の先駆の再評価
アニタ・パレンバーグの75年の人生(諸説あるが生年は42年)。M・フェイスフルと並ぶ――あるいはそれ以上のR・ストーンズを先導/扇動した存在として60年代後半を駆け抜けた彼女だが、それ以降にもしっかり焦点を当てた良質のドキュメンタリーだ。波乱の70年代の姿は痛ましくも、あのキース・リチャーズが唯一無二と呼ぶアイコンの“自分語り”(未発表の回顧録)がS・ヨハンソンの声を得て再生される。
嬉しいのは実子の協力やホームムービーの豊富な貴重素材に加え、映画トピックが多いこと。シュレンドルフ監督の『Mord und Totschlag』(67年)でカンヌ入りした際の映像など、まさに時代の先端的眩しさ。





















