アバウトアス・バット・ノット・アバウトアス (2023):映画短評
ライター4人の平均評価: 4.5
カンペキ!
コロナ禍を逆手に取って制作された、ミニマムな時間・空間・出演者によるワンシュチュエーションドラマ。の、はずなのだが、元カップルと思わしき教授と元教え子の力関係が二転三転するスリリングな会話劇、愛憎をちょっとした表情や仕草で魅せる主演2人の巧みさ、舞台はレストランのみ!であることを忘れさせるカメラワークと編集など、緻密な計算と技術が詰め込まれ、なんと濃密な91分の作品か。特筆すべきは2人が二役を演じるシーン。その別人ぶりと意表を突く演出は鳥肌ものだ。過去作『ダイ・ビューティフル』は設定の方ばかりに着目してしまったが、”監督・脚本ジュン・ロブレス・ラナ” 、恐るべし才能だ。
お洒落で知的で都会的、フィリピン発の巧妙な心理サスペンス
舞台は小洒落たレストランの窓際のテーブル席、主な登場人物もゲイの大学教授とその元教え子である若者の2人のみという、まるで舞台劇のようなワンシチュエーションの会話劇。これで1時間半も持つのかと思いきや、たわいのない2人のやり取りは次第にスリリングかつ巧妙なパワーゲームへと展開し、一見したところ温厚なインテリ男性とナイーブな好青年の全く違う別の顔が徐々に浮かび上がっていく。人間の多面性と複雑な心理に迫る脚本が見事。さらに、会話の中に登場する3人目の人物を、主演俳優2人がフラッシュバックで演じ分けることによって、人間の主観やバイアスの曖昧さが際立つ。映像技法の面白さも特筆に値する言えよう。
複雑な師弟関係から、社会が、世界が見えてくる
舞台は一軒のレストランで、主要登場人物はふたりだけ。舞台劇としても成立しうると思ったら、実際にそれが企画されているとのこと。それほどまでに濃密な作品だ。
主役は教授と教え子。世代は異なるも、どちらもゲイで、たがいに憎からず思っている。そんな彼らの会話が、どんどん緊張感を帯びていくのだが、この展開がみごと。ふたりの共通の知人だった亡き大学教授の存在も巧妙に生かされ、高濃度のサスペンスを織りなす。
役者ふたりの熱演もさることながら、ジュン・ロブレス・ラナ監督の演出も冴える。エンタメとしての完成度はもちろん、世の欺瞞、世代間の断絶などの社会性が浮かび上がる逸品。
天使か悪魔か、ただの人間か
『ダイ・ビューティフル』のJ・R・ラナ監督による質の高い会話劇だ。コロナ禍のレストラン、ほぼテーブルと椅子だけの舞台装置。文学教授と教え子の会合は、やがて心理的なパワーゲームの様相を苛烈に呈していく。メガネという小道具ひとつで“三人目”が立ち現れる設計も巧み。英語とフィリピン語(≒タガログ語)のスイッチングも含めて複雑な多層性を発生させる。
セクシュアリティから表現の倫理まで、91分の中に現代的な主題が総目録的に流し込まれた構成。多くを共有しているようで、実は分断の深い二人が見せる世代対立の図としても鋭い。演劇版上演も決定しているが、既にこの映画は完璧に仕上がった舞台劇の映像版といった趣だ。























