ユースフル・ゴースト (2025):映画短評
ライター2人の平均評価: 3.5
オフビートな可笑しさと深いモチーフが同居する
夫と相思相愛だった妻が死に、掃除機の姿になって夫の元に戻ってくる。夫はそんな彼女を愛し続ける。そんな奇想ラブストーリーなのだが、物語には幾つも層がある。
物語は「ある男に向かって、初対面の正体不明の男が語る物語」という枠組みの中で進み、ゴーストストーリーなのに、真昼の明るく澄んだ色彩。カウリスマキ映画のような、独特の間合いとほのかにユーモラスな気配が漂う、オフビートなラブストーリーでありつつ、物語が進むにつれて、思わぬ形で舞台であるタイの社会問題や忘れてはいけない歴史に触れていたことに気づかされる。少々風変わりな可笑しさと深く大きなモチーフが同居する独特の味わいが、長く後を引く。
前代未聞!こんなゴースト・ストーリー、見たことない!
60年近く生きていると、だいたいどんな映画を見ても既視感を覚えるものだが、これは滅多にない例外。あえて比較するならばヨルゴス・ランティモスだろうか。舞台は現代のタイ。工業製品に幽霊が取り憑く現象が頻発する中、亡き妻が掃除機になって戻って来た夫の話が主軸となる。シュールでユーモラスでちょっとエッチなホッコリ映画かと思いきや、物語は徐々に意外な方向へ。幽霊が現れるのは彼らを覚えている人がいるから。そこで権力者たちは戦争や虐殺など国家にとって不都合な出来事で犠牲になった幽霊たちを消し去るべく、彼らの存在を人々の記憶から抹消しようとする。歴史修正主義に対する痛烈な皮肉がたっぷり込められた怪作だ。






















