ラスト・サバイバー:映画短評
ライター7人の平均評価: 3.7
“どう生き延びるか?”から“どう生きるか?”へ
『28年後…』シリーズの後では分が悪い気もするが、そこは剛腕R・スコット。『オデッセイ』のような飄々としたタッチでディストピアを描いてみせる。
いるべき場所を探そうとするパイロットの道行きをたどりながら、人間のモラルの喪失や自衛力、なお残る享楽欲求などを浮き彫りに。それが“どう生き残るか?”から“どう生きるか?”へといたる心の旅路に重なり、ドラマ的な味が宿る。
迷える主人公にふんしたJ・エロルディの喪失感の体現もよいが、面倒な頑固ジジイと思いきや戦闘では無双状態になる元軍人にふんしたJ・ブローリンがキャラ的にも、主人公と対を成す個性としてもイイ味。
現実世界の映し鏡のごときディストピア映画
パンデミックによって人類がほぼ絶滅し、わずかな生存者たちが限られた資源や食料を奪い合う世界。信頼できる退役軍人と共に安住の地を守って暮らす青年パイロットが、たまたま無線で傍受した「声」に導かれて冒険の旅へ出る。リドリー・スコット版『マッドマックス2』とも呼ぶべきディストピア映画。それゆえ新鮮味はあまりないのだが、しかしどことなくのんびりとした牧歌的なムードは、むしろリアルな終末世界としての説得力があるように思う。未来への希望を見出しにくい時代に、自分だけでも生き残らんと他者を蹴落とし争うのか、それともみんなで手をつなぎ分け合い共存共栄の道を探るか。現実世界の映し鏡のような作品と言えよう。
すでに多数あるこのジャンルに新鮮さを加えられず
世界の終焉を舞台にしたアクションスリラーは、最近でも「ウォーキング・デッド」「THE LAST OF US」など多数ある。リドリー・スコットが豪華キャストで劇場用に作ったこの映画にはこれらテレビ作品以上のものを見つけられず。バイオレンス、恋愛、ユーモアなど色々な要素はあるも、結局何についての映画だったのかわからない。現実味が薄いのも理由のひとつだろう。世が崩壊して数年経ち、誰も来ない場所にいるマーガレット・クアリーが鮮やかな口紅のばっちりメイクとか、アメリカが舞台なのに生き残った主要キャラクターはベネディクト・ウォンを除いて白人だけとか。そんな中でもジョシュ・ブローリンは良い味を出している。
大草原のマッドマックス
リドリー・スコットによるディストピア映画。原作はもっと内省的なものとのことですが、映画化されるに至ってリドリー・スコットのサービス精神といい意味での人の悪さが濃密に煮込められた一本となり、結果として大草原を舞台にしたマッドマックスのような映画になりました。主演は目下売り出し中のジェイコブ・エロルディ。規格外のスタイルの良さもあってアクションが実に映えます。共演陣も巧い面々が揃っていますが、中でもジョシュ・ブローリンとガイ・ピアースの二人のオジサンが実にチャーミングです。基本的には荒廃した世界の物語ですが緊張と緩和が効いていて時折不思議な笑いが生まれます。
終末世界に、巨匠が飴とムチの演出で応じる
リドリー・スコット監督によるディストピア映画なので、44年前の大傑作も頭をよぎるが、本作は大自然に囲まれた場所でのサバイブでSF色は少なめ。舞台は2035年で、パンデミック、ロックダウンの言葉が身近な脅威を実感させたりも。
激しい闘いと、優しい人間&犬ドラマで緩急をつけ、全体には「鋭さ」「怖さ」より、物語の澱みない流れが追求された印象。これを「観やすい」ととるか、「インパクト不足」ととるかは人それぞれか。
それでも、要所のアクション演出はパワフルかつ刺激的で、現在88歳の巨匠の、衰え知らずのエネルギー、アイデアに感服する。
キャストでは短い登場ながら、アリソン・ジャネイのキワモノ感に震えた。
リドリー・スコット監督版『マッドマックス2』以降!
ジェイコブ・エロルディのメロさ全開なポスト・アポカリプスSF。ジョシュ・ブローリンとの日常が淡々と描かれる1部、マーガレット・クアリー&ガイ・ピアースの父娘と出会う2部、理想郷の先にアリソン・ジャネイが待ち受ける3部で構成されたロードムービーの中、『少年の犬』を軸に『怒りのデス・ロード』のウォーボーイズも『28年後... 白骨の神殿』のジミーズも入り乱れるバトルも展開。御年88歳リドリー・スコット監督の「7歳年下のジョージ・ミラーには負けねぇ!」という気合が感じられるなか、原題「THE DOG STARS」も、単行本の邦題「いつかぼくが帰る場所」も間違いじゃない不思議な感覚が後を引く。
人間のいない世界で、夜空の星が美しい
パンデミックのため人間の数が激減した世界。街に人の姿はなく、植物は勢いを増して緑色を濃くし、コンクリートの建造物は植物に覆われつつある。人間の産業活動がないので、空気は澄み、空は青い。主人公は愛犬と一緒にセスナ機に乗り、そういう光景の中を移動する。夜は星が美しい。リドリー・スコット監督が描きたかったのは、こうした人間のいない世界の静けさなのではないか。
生き延びた人々は、この状況でどのように暮らすのか。そもそもこの世界で生きるとは、どのような営みのことなのか。孤立化から破壊集団化まで、各自が選んだやり方が、何種類も描かれる。主人公が迷いを経て、やがて辿り着く地点を見届けたくなる。


























